スーパーコンビ
SANKYO
発表時期 |
1986年
春
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種別 | 普通機 |
玉貸機 |
現金機
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賞球数 | オール13 |
3つ穴クルーンを使用した機種で、導入初期こそ普通機として使用していたホールもあったが、基本的には一発台として使われ一世を風靡した。
3つ穴クルーン手前穴に入るとセンター下部のチューリップが開放する。これで「大当たり」になる(他の2つの穴に入っても13個の賞球があるだけ)。「大当たり」後は右打ち。大当たり中に再度、クルーン手前穴に入るとパンク(チューリップが閉まる)する。
一発台仕様では、まずクルーン入賞口となる天下の生命釘が厳しめに調整される。センター下部のチューリップに直接入賞する部分の釘を入賞しないように釘が曲げられる。開放したセンター下部チューリップに当たった玉が盤面右下の落とし部分にあるチューリップに入りやすくなるよう、それでいて通常時は右打ちしても入らないように調整される。
あとはホールが決めた定量個数まで右打ちして出玉を稼ぐだけ。
基本的に一発台として使用された『スーパーコンビ』では、天下入賞口から入賞→3つ穴クルーン手前穴入賞→右打ちして出玉を稼ぐという展開になる。重要なのは、クルーンへの飛び込み率と、クルーンに入った玉の手前穴入賞率となる。
また、玉持ちという点では、通常時に左落とし部分にあるチューリップや天穴に入る頻度に左右されるが、台選びでそこまで見る人はほとんどいない。また、盤面右側下部の釘調整によって打ち止めに要する時間が少し異なるが、これもホール側がいったん決めるとほぼ調整されることはなかった。
クルーンへの飛び込み率は、一発台ということもあって、1000円で1個、平均的に飛び込むような台はない。台の寝かせやクルーンのクセなどによって異なるが、打ち止め個数×換金率で求められる数値を2~4で割った数値が打つ際の目安になる(いわゆる「ボーダーライン」ではない)。とはいえ、実際の体験談でもあるが、500円で2個とか、1000円で2個通った(天下入賞口からクルーンに入賞すること)台で、その後、1万円使って1個も通らないということも珍しいことではない。逆に2万円使って1個も通らない「回収台」が同じ日のその後に1万円で3個通ったりと、クルーンへの飛び込み率を正確に把握することは難しい。
これはストロークにも左右される。基本的な打ち方はぶっ込み狙いか、ぶっ込み弱め、そして山・谷釘間狙いの3つ。打つ台の最適なストロークを釘調整から判断するのが最良だが、実際は釘から判断するというよりも、打つ人のクセに左右されやすい。『スーパーコンビ』ならぶっ込み弱めで打つ、というように、どの台を打つ際であっても最初から決めているわけだ。
クルーンに入った玉の手前穴入賞率は求めにくい。実体験では5個連続手前穴入賞という記録がある。ハズレの連続記録では8個程度までは数えたことがある。信用度は低いが、他人の話として26個連続でハズしたというのは聞いたことがある。
なぜ、手前穴入賞率が求めにくいのか。台の寝かせやクルーンのクセによって異なるからだ。大雑把に言うなら3つ穴だから1/3と言いたいところだが、穴の大きさなども考慮すると1/4前後だろう。
クルーンにおける手前穴入賞パターンを分析すると主に、以下の3通りとなる。
①玉が飛び込み入賞後、クルーンに落ちて時計回りで回転後にいずれかの穴に落ちる。王道パターン。
②玉が飛び込み入賞後、クルーンに落ちて反時計回りで回転後にいずれかの穴に落ちる。珍パターン。
③玉が飛び込み入賞後、クルーンのいずれかの穴に直接入る。回転しないので面白くないが、手前穴に入るのであれば問題なし。ハズレ穴に入った場合はハラハラ感を味わえないので非常につまらない。
これ以外にも、手前穴入賞パターンではないが、大当たりになる可能性があるパターンとして、
④飛び込み入賞口に玉が挟まったら大当たりと認めるホールでは玉が挟まれば、
⑤センター下部チューリップへの直接入賞口の釘に挟まった場合、
などに大当たりになる。
『スーパーコンビ』との出会い
『スーパーコンビ』(以下、コンビと略す)との出会いは忘れられない。初めてのABCや初任給の使い道など、ほとんどのことは忘却の彼方だが、コンビとの出会いは心に残っている。
その日(昭和61年4月某日)は『ハードロックⅡ』(大一商会。昭和61年導入開始)を打っていた。ピュ~♫ピュ~♪の効果音を楽しみながら打ち止めを目指していた。その背中側に設置された新機種がコンビで、普通機として導入された。
天下の飛び込み入賞口からクルーンに入って下部チューリップを開かせる王道パターンがメインだが、右側の飛び込みからも入るし、下部チューリップへの直接入賞もある。左右落とし部分のチューリップ周辺の釘調整は一発台仕様ではないから、右打ちしても玉の増えるスピードは緩やか。そして簡単にパンクする。普通機営業だから当然である。ただし、台によっては1000個くらいまで一気に増やせるケースもあり、入賞とパンクを繰り返す面白そうな機種だなという印象を受けた。
なぜ、この程度の事実を印象深く覚えているのか。それは『ハードロックⅡ』を打ちながら見ていたので、何かの拍子に100個程度(!)だが、玉をこぼしてしまったのだ。これがパチンコ人生で最大最悪の「玉ぶちまけ事件」だったから印象に残っているのである。
コンビのシマにいた憎めない連中
コンビのシマには数多くの個性的で愉快な仲間たちがいた。もちろん、一発台仕様になってからのことである。
①土建屋の社長。自らそう名乗った。見た目はほぼヤクザ。50代。夕方5時過ぎにやってきてコンビばかり打つ。のちに奥さんと息子を連れてくるようになる。意外に綺麗な打ち方をする。話すと親しみやすく楽しい男。
②吉田君(本名)。昭和太郎が羽根モノメインで稼いでいた頃に「社長社長!」と呼びながら近づいてきた30代の陽気な男。元営業マン。負けが込むと死んだ魚の目になる。通ったら台を引っ張るのがクセ。のちに玉を削って勝とうとした。その努力は違うことに使えばいいのに。
③細身の斜め男。40代くらい。いつも身体を斜めにして打つ。全く喋らず、喜怒哀楽を表さない。コンビで大当たりになっても淡々と右打ちするのみ。コンビでは少なくとも負け越してはいないのではないか。
④汗 かきお。小太りの40代で、大相撲で言うなら負け頭筆頭。実績のない台を打つことが多く、前述した26個連続ハズレを告白したのは彼。同じ台で汗をかきながら粘ることが多い。
コンビの打ち方指南
今さらだが、コンビの「正しい」打ち方を指南したい。
まずは玉が天下入賞口を通った際の反応である。
①慌ててハンドルから手を離して食い入るようにクルーンを眺める(台を引っ張ったりド突く人を含む)
②慌てず騒がず右手の人差し指でウエイトボタンを押し、静かに玉の動きを見る
楽しむなら完全に①であるが、周囲の人の注目を集めるし、通ったことがバレて優秀台かどうかの参考になってしまうので初心者扱いされやすい。ただ、吉田君(本名)などは通った瞬間に左手を上皿にかけて玉の動きを追い、ここぞというタイミング(本人談)で台を引っ張って大当たりを狙うので、常に①だ。引っ張ることによって大当たりになる頻度がそれなりにあるので、実績を作ることによって初心者扱いはされなくなる。
土建屋の社長も①タイプで、当たってもハズれても実に楽しそう。たまに叩いたり引っ張ったり。どの程度の頻度で玉がクルーンに飛び込んでいるのかの参考になるので、個人的にはこの手のタイプが多いほうが嬉しい。
②は昭和太郎、細身の斜め男のパターン。ウエイトボタンを押して静かに玉の動きを見るのは、他人に通ったことを察知されたくないから。叩いたり引っ張ったりしないのは、それの効果を疑っているから。ただ、クルーンへの複数入賞はパンクの可能性があるから、通った瞬間にハンドルからすぐに手を離すほうが、そのリスクを抑えられる。
実際に、ウエイトボタンを押そうとしたときに指の位置がちょっとズレてしまい、1個だけ余計に玉が打ち出され、何とその玉がクルーンに入って…もうおわかりですね、最初の玉が手前穴に入って喜んだのも束の間、2個目の玉も手前穴に入ってパンクしたことが…2回ある。隣のBBAが大当たり時に流れる効果音と光に反応してこちらも見て多分羨ましそうな顔をしたと思うのだが、その2秒後にパンクしたのを確認して「あらまあ」の一言。人生で一番気分の悪い「あらまあ」を聞いたのであった。
ちなみに、こういった2個入賞によるパンクは数回経験している。また、右打ちしている際に玉が左側に跳ね返ってきてその玉が通って手前穴に入りパンクした経験も複数回ある。
なぜそこまで通ったことを隠したいのか。優秀台を知られたくないからだ。よく常連客が「どれくらい通った?」などと尋ねてくることがあった。答は「2個くらいですね」。
パパ活アプリで初めて会う女の子に「ボ…ボクで会うの、な…何人目ですか?」という問いに、女の子が「3人目くらいです」と答えるようなもの。本当のことを言う意味もメリットも何もないし、天気の話をするような時間潰しの会話としか考えていないのだ。2個くらいの2個は1万円使ってなのか、打ち始めたこの台でのことなのか、それすらもあやふや。大体「2個くらい」とか「3人目くらい」の「くらい」の部分で察するべきである。
ただし、土建屋の社長や吉田君(本名)が聞いてきたときは、比較的正直に答えていた。彼らもバカじゃないからある程度はこちらが打っている台の通った個数は多少把握していたからだ。
そうはいっても、こちらも演技派である。なかなか通らないときは天穴入賞した瞬間にハンドルから手を離して天を仰ぐ。その後に払い出しの音。完全犯罪の成立である。そう、たかだか天穴に入っただけだが、周囲は勝手に「通った→ハズれた→賞球の際の音も確認」で勘違いしてくれるのである。2台隣で打っている吉田君(本名)がこっちを見て台を手前に引く仕草をしながらにっこりする。うまく騙されてくれたようだ。俺の評判は上がる(よく通る台を打っていると勘違いする)メリットはあるが、本当に優秀台を打っている場合はこの台をよりマークされてしまうデメリットがある。
好プレー珍プレー集
4万円負けからの勝利
5万円持っていつものホールに打ちに行った。一発台を打つことを考えると心許ないが、基本的には羽根モノなどがメインだから問題はない。4万円使った時点で1回も大当たりにならず、ただいつも以上に通っていたのでヤメるという選択肢はなく、残り1万円で少しでも取り返せればいいなと考えながら打つと…。
その後の1万円で5回大当たりして見事に負債をチャラにすることができた。こういったことがあるから負けてもやめられなくなるのだ。
先着3名は1万個!
浅草のほうに行った時のこと。朝一の開店から先着3名のみ、コンビで大当たりした人は出玉が1万個になるサービスを行っているホールがあった。初めて行くホールで、昼過ぎからは大相撲を見る予定だった。マス席を3人で予約しており、珍しく友人3人でそのホールへ。開店と同時に店に入り、台を選び、打ち始める。と、1000円使ったところで通って手前穴に綺麗に入った。周囲のオヤジ連中の視線が冷たく痛かった。友人2人は大当たりせず、結局、3万円の利益はその日の飲食に消えたのだった。
閉店ギリギリで当たると!
九州の某ホールでは、コンビコーナーで異様な煽りを行っていた。大当たり後にサイコロを振り、ゾロ目が出ると打ち止めが1万個になる。そして、1のゾロ目なら3万個。大人気の一発台ならそんなことをしなくても客は付くのだが、より多くの客を付けようという努力だろう。
究極は、閉店前の3万個サービス。当時は23時閉店を謳っていても、実際にホールから最後の客が外に出たのが24時だったなんてこともあった(体験済み)。だから、23時の閉店ギリギリの最後に当たった客のみに3万個の出玉サービスを行うというシステムも可能だった。これはめちゃくちゃアツい。とにかく23時に一番近い客が3万個である。22:55に当たると、まずは3万個の「権利」獲得。当然、煽りアナウンスが流れ続ける。「さあ、こちら223番台のお客様、現在、3万個の権利獲得目前です! あと5分、23時までに当たればそのお客様が3万個でございます。あと4分…あと3分…お〜っと、228番台のお客様あああああ、今、大当たり大当たり大当たりぃぃぃ、おめでとうございますうううううう。3万個の権利は228番台のお客様に移動しましたああああああ。さあ、あと2分、おっと1台、空き台が出ましたよぉ~。あと1分、まだまだチャンスはありますぅぅぅ!」。
裏で叩くのもヤメていただきたい
馴染みのホールで『コンビ』を打っていた時のこと。叩かない引っ張らないがモットーだからその日も静かに打っていたのだが、同じシマに設置されている権利モノで誰かが派手に台を叩いているようで、そのせいではないけれど手前穴に入らなくてイライラしていたので店員を呼ぶ。手の動きで「台を叩いているヤツがシマの裏にいる」と報告する。ゴト師が来たときなどにもすぐに店員に報告する(自分が損をするから)。そんな実績もあるので、その後は静かになった。台を叩いていた奴がどうなったかは知らない。
最高に美しい当たり方
『コンビ』で最も美しい大当たりの仕方。
当たれば何でもいいじゃないか。確かにそうだ。しかし、当たり方に美学を求めてもいいだろう?
最もポピュラーな当たり方は、クルーンで時計回りに回転し、だんだんと回転スピードが落ちて手前穴に入るパターンである。まるで予定調和のごとく手前穴に入るサマは、グランドキャニオンやオペラハウスの美しさに引けを取らない。マーライオンの20倍以上感動することだろう。
この亜流として、いずれかのハズレ穴に落ちそうになってから戻って手前穴に入るパターンも嬉しすぎる。振られたイケメンに改めて告白されるような感動がある。台を叩かなくて良かったと思う瞬間でもある。もっとも叩いていたらどうなったのかは神様でもわからないけれど。
声を大にして言いたいのは、クルーン中央奥から一直線に当たり穴に入るパターンだ。左右のハズレ穴の間を、まるで線路でもあるかのように転がってくるのだ。その瞬間は背中に稲妻が走る。『コンビ』を打つなら一度は体験しなければならない当たり方だ。
玉の動きは見たい
天下入賞口に玉が挟まってしまうことがある。特に設置から長い時が経過し、完全回収に入ったホールでは起こりがちだ。
対処方法としては次の2通りだろう。一つは、その時点で大当たりとして認める。釘調整に自信があり、玉が引っかかるような調整をしたことを恥と思うホールだ。
一方で、開放札などのプラスチック板で天下とクルーンを隠して玉を押し込むケースもある。結果が出るまでそのまま見せない場合と、押し込んだ後で店員と2人で眺める場合がある。前者は全くつまらない。何のために打っていると思っているんだ、と思う。後者はまだマシ。玉の動きを楽しめるからだ。ただ、店員が押し込んだ場合の手前穴入賞率は通常より低い。何のエビデンスもないけれど、だからといって後続の玉で押し込もうとして肝心かなめの玉がポロッと落ちて涙目、なんてことも経験しているから、やはり素直に店員を呼んだほうがいいだろう。
数秒でも店員目撃なら大当たり
毎日のように常連ホールでコンビを打っていた頃、それまで羽根モノをメインにして稼いでいた奴がすっかり落ちぶれたとでも思ったのか、それとも暇なのか、よく店員が俺の後ろに立って見ていることがあった。
そんなある日、普段はそこに玉が挟まることなんてほぼないクルーン下のチューリップに直接入る部分の釘の間に玉が挟まったことがあった。落ちないように玉を凝視しつつランプを点けるため左手を台の上に伸ばした。すぐ後ろにいる店員が来る。その刹那、玉が落ちた。挟まっていた時間は数秒程度。
「今、見たよな! 挟まってたよな! 見ただろ?」
果たして…。
仕方ないという表情をしたキャリア2年以上のその店員は「仕方ないな。見ちゃったよ」。
そう言って大当たりにしてくれたのであった。
パチプロ失格
それまでの羽根モノメインの立ち回りからコンビにまで手を出すようになった俺。パチンコは稼ぐことと割り切っていたのに、パチンコの楽しさ、面白さ、興奮を味わえることに気が付いてしまったのだ。女衒がマジ惚れして仕事にならなくなったようなものかもしれない。
通っていたホールに限らず、これまでの出会いで俺が唯一パチプロとして認めた黒カバンという男がいる。いつも黒カバン(セカンドバッグ)を持っていて、何が入っているのか、それはパンパンなことが多かった。噂ではパチンコ玉が入っている(換金率が安いホールだったので、端玉などは持ち帰ったほうがお得→やっちゃダメ)とのことだったが、確認したことはないし、ホール内で相当の時間話をしたことがあるけれど、こちらからそのカバンに触れることもなかった。
そんな筋金入りのパチプロは常連だった都内T区のH店からヤサ替えしてやってきたのだが、このホールでパチプロをやっている奴らに様々な面で筋を通した。実力もあったし、すんなり受け入れられ、敵もいなかった。
とにかく釘を見る目が正確。これは認めざるを得ない。
通常、パチンコは姿勢良く打つ。そのほうが長時間ホールにいる身としては楽なことがわかったからだ。そして、背中側の通路を通る奴らに釘を見せないという狙いもある。しかし、黒カバンが来た時だけは別。しっかり見せて差し上げる。
こんなことがあった。羽根モノを朝から打ち始めた。前日に自分が打ち止めにした台だ。打ち始めて少しすると、黒カバンがやってきた。釘を見せてやる。ボソッと彼は言った。
「釘、変わってる(調整された)じゃねえか」。
答える俺。
「そうですね、でも(この程度のシメなら)30分(昨日、打ち止めに要した時間)では無理ですけど、2時間かからずイケます(打ち止めにできる)よ」。
そして2時間弱で打ち止め。
この出来事から彼の俺を見る目や接する態度が明らかに変わり、より深く話すようになった。
それなのに…。
今では釘の厳しいコンビを打っている俺。
ある日、珍しくコンビのシマに立ち寄った黒カバンの気配を感じ(ガラスに映るから…)、羽根モノを打っている時のように釘がよく見えるように身体をずらす。
釘を見て一言。
「よくこんな(厳しい釘の)台、打てるな」。
さすがに返す言葉はなかった。
「もうお前はプロじゃねぇ」。
そう言われたような気がした。
賞球数 | オール13 |
スーパーコンビⅡという兄弟機が後に発表された。基本的なゲーム性は全く同じ。