栄光への試練

1993年10月28日

カタールのアル・アリ競技場。ドーハの悲劇以来29年が経過した。


ドーハの悲劇


この日の事を知っている人は今ではもう少ないかも知れんが、30年前の出来事だとしても私の目にはくっきりと焼き付いている。最終戦で勝てば悲願のワールドカップ初出場。今でこそ毎回のように本大会に出場しているが、その当時はアジア圏の出場枠が少なくてなかなかワールドカップに出ることさえも叶わなかった日本。

 


最終戦を前にして日本は1位に付けていた。勝てば無論出場。引き分けでも他チームの動向次第では本戦出場となるが韓国の最終戦が北朝鮮だったので日本は引き分けならかなり危うい立場だった。この当時の順位表を見ると勝利⇒勝ち点2で引き分け⇒勝ち点1。兎に角日本はイラクとの最終戦で勝てば良かったし、この試合は最後の最後まで日本が2:1とリード。後半の45分が経過した時点で誰もが日本の勝利を確信した。ロスタイムもあと僅かというところで相手チームにコーナーキックのチャンスが与えられた。多分このワンプレーさえ凌げば日本の勝ちと思って固唾を飲んで見つめていたが、相手のキッカーがゴール前にボールを入れずにショートでつないだ。この時点で僕は日本が勝った!そう思った時ショートでつないだボールをセンタリングされてゴール目の前でヘディングシュート。

 

まさかの同点弾だった。
 

 

この結果北朝鮮に圧勝した韓国が得失点差で2位となりワールドカップ本戦出場。日本はワールドカップに出られなかった。


日本中が泣いた!

 

あれから25年が経過した2018年。

 

柴崎が魅せた個人技が相手を追い詰めた。多分この選手は相手の嫌がることができる能力があると思われて、この何年か前のトヨタカップでも輝きを放っている。リアル・マドリードVS鹿島アントラーズとの一戦は見事だったし、私はもしかしたら日本のチームがレアルに勝つのか?日本のチームがクラブ世界一になるのか?って一瞬だけ夢を見たけれどその夢は僅か数分で砕け散った。日本のディフェンスは限りなく弱い。決定力がないとか、攻撃面の弱さを指摘されることが多いけれど、日本が本当に弱いのは守備力。2:1とリードした直後にクリスチャード・ロナウドが本気になって攻めてきた。彼が本気になると日本の弱いディフェンスなど一瞬で崩されて、あっという間に2点を取られて逆転された。2010年のワールドカップドイツ大会でも、直前に日本はドイツと親善試合を行って一時だけ2:0とリードした。

 

0:0の時は日本はあまり点を取られない。


でも日本がリードした瞬間に相手が本気になって攻めてくる。


相手が本気になって攻めてきたら日本はいとも簡単に


ゴールを割られる。

 

何事もそうだけど勝負事はディフェンスが命である。ニッポンはディフェンスが弱いためにこれまで大舞台で何度も泣かされ続けてきたのだ。その2018年の前回ロシア大会。柴崎岳が躍動した。この大会は彼の為にあるのかと思ったけれど、開幕戦のコロンビア戦から攻撃のスイッチを入れる縦パスは際立っていた。ベルギー戦での前半48分。0:0から原口に送った絶妙のスルーパスは日本に夢をもたらしたかに見えた。後半の開始早々直後にも日本は得点しこの時点で2:0となりまさか。格上のベルギーに勝てるのか?ベルギーには2002年の日韓共催のワールドカップでは勝利しているけれど、その時のベルギーより格段に強いチームであり、優勝争いの一角。確か世界ランキングでも2位とか3位じゃなかったかと記憶している。

 


未だヨーロッパの強豪チームに一度も勝てていない。

 

今年こそ勝てるのか?

 


然し筆者は2点目を入れるのが早過ぎたかなと思っていた。残念ながら日本の守備力は、ヨーロッパの強豪国と比べるとあまりにも脆弱なので、2点くらいのリードであと40分戦うのは厳しいんじゃないかと感じていた。案の定2:0になってから日本は守りに入ったように見える。できれば後半の35分を過ぎたところで2点目が欲しかったけれど、後半の5分では早過ぎる。ここからベルギーの怒涛の攻めが続く。まさにライオンが羊を襲うように、日本のゴール手前に圧力をかけてくる。後半の20分くらいに相手オフェンスに圧力をかけられて川島(GK)が前に出られない。もみ合いの中相手のシュートを受ける形になってパンチングしたものの、前に飛び出した川島の頭上を相手のヘディングシュートがゴールネットを揺らしました。この試合の一番の問題はここだったように思いますが、もみ合いの中宙に浮いたボールを強引に奪いに行けば良かったと思いますが、前に出れなかった為にパンチングで一時凌ぎをしたものの、相手のチャンスが継続して次の矢を放たれましたね。

 

ペナルティエリア内でのフィジカルの弱さ


前に出れるだけの体の強さが備わっていない。

 

この失点を皮切りに直後に同点弾。そして終了間際に縦パス一閃でした。

 


あまりにも弱いニッポンのディフェンス。元々ドーハの悲劇でも日本の守備力の弱さが招いた失点なのに、あれから25年経過しても日本のおこちゃまサッカーは何も変わっとらんがや!ドーハの悲劇の教訓はここでも生かされず、守勢に回った日本のディフェンス陣営をあざけわらうように、強引に攻め立てるヨーロッパのライオン。いとも簡単にゴールを割られます。


もうニッポンはサッカーでは
無理なのか?

 

野球は第1回、第2回ともにWBCワールドカップを制しています。松井が、イチローが世界に通用する輝きを見せるのにサッカーで彼らに匹敵するような選手は今まで見たことがないです。日本のサッカー界で唯一通じるかな?って思ったのは釜本さんくらいですかね。後に続く選手もそれなりにはいたけれど、三浦カズ、中村俊輔、香川、本田。いずれも松井やイチローに匹敵するほどの活躍を見せたとは言い難いし、何よりも

 

大谷翔平に匹敵する選手がいない。

 

 

野球界では誰も成し得なかったような活躍を見せる選手が現れました。サッカーでは今後もそんな選手は出ないのと違うんか?


マラドーナ

ロマーリオ

ジダン

シャビ(XABI)

ロナウド

メッシ


日本からこんな選手はひとりも出ないんだろうなって思ってる。

 

日本人は野球には向いているけれど、サッカーには向いていないんじゃなかろうか?体格の違いで勝負が決まるバスケットやバレーでは無理だと思うけれどサッカーや野球なら体格の差だけでは勝負が決まらない。なのに何故野球では世界に通用するのに、サッカーは世界に通用しないんや?っていうのがずっと疑問でした。日本人のフィジカルやテクニックは野球をやるために作られているのか?

 

Two men collide.
Two men collide.
Two men collide.


Two men collide.
Two men collide.
Two men collide.


Two men collide.
Two men collide.
Two men collide.
二人の男が衝突する


If you win or you lose.
君が勝利するのか? それとも敗れるのか?

I'ts a question of honour.
それは栄光への試練だ

And the way that you chose,
君が選ぶその道が

I'ts a question of honour.
それは栄光への試練だ

I can't tell what's wrong or right.
何が正解で、何が不正解なのか?

If black is white or day is night.
黒が白なのか? それとも昼が夜なのか?

But I know when two men collide.
でもイレブンとサポーターが衝突するときは

I'ts a question of honour.
それは栄光への試練だ


 

 

 

 

 

2022年11月23日。ニッポンのワールドカップが始まりました。相手は強豪ドイツです。サウジアラビアがアルゼンチンを破るという大金星を上げましたが、正直アルゼンチンはワールドカップでは弱いです。メッシはW杯では一度も輝いたことがありません。常に優勝候補の一角と見られても本戦では力を発揮することができず常にメッシのいるW杯は屈辱的なものでした。今大会もそれは同じでした。でも


ドイツは違います。

 

ゲルマン魂。高いポゼッション能力とフィジカル、テクニックだけじゃなくこのチームは毎回メンタルの強さを感じます。あまり格下のチームには負けたことがないと思います。日本には付け入るスキなんてないでしょう。だから負けることを前提に見るんですけど、もしかしたら0:0の引き分け?あるかも的な願いから今回も夜の10:00前からテレビの前にかじりつきでした。ワールドカップという大会は、予選リーグではあまり本気になってこないこともある?って勝手に思ってるけれど、ドイツから見れば日本はおこちゃまサッカーでしかないから本気で来ないのではなかろうか?予選リーグには延長もなければPKもないので0:0でも両者勝ち点1。最悪このパターンでも手を打つ時があるので、この1点に賭けました。

 

前半:7分10秒


日本のハイプレスがいきなり機能する。相手のボールを積極的に奪いに行ったボールをカウンター攻撃。前線に送ったパスを前田が仕留めてゴールネットに突き刺さる。やったーと思った瞬間オフサイドでした。映像を見ればほんのちょっとだけ前田の飛び出しが早かったけれど、サッカーはこういうのが一番難しい。オフサイドを怖がればボールに触れないし、蹴りに行こうとすれば自然とオフサイドの可能性は高まる。止むを得ないでしょうかね。

 

気を取り直していこう。

 

然しながらここからあとは日本のハイプレスが相手に通じずに、ドイツの攻撃をもろに受ける。徐々にドイツの攻撃が日本のゴールに迫る。決定的なシーンが前半だけでも何度もあった。

 


前半:16分

相手のヘディングがヘディングミス。決定的だった。


前半の20分から30分の間に相手の決定的な場面が何度かあった。


前半:30分


相手がセンタリングを上げようとしたところをキーパーの権田が深追いする。これがペナルティエリア内でのファウルと判断され天を仰ぐ。ビデをを見直したがこれでファウルはないなあって感じ。日本にとってはあまりにも大きい痛手だった。これで前半を00:0で折り返すことは困難。簡単にPKを決められて1:0と先制された。たださえ厳しい相手なのに先に点を取られるとは、もうこれで勝ちはなくなった。何とか前半を0:0でいきたかったですけどね。この1点で意気消沈だったけどかすかな希望を感じたのは前半の終了間際。

 

前半:48分


相手に押し込まれマイナスのセンタリングを許した後に強烈なシュートを打たれキーパーが弾く。こぼれ球に飛び出した7番がゴールネットを揺らして2:0。この段階で完敗だと思ったけれど、日本がビデオ判定を要求した。映像を見る限り相手の7番がほんのちょっとだけディフェンスより前に出ているのが分かりホッとする。多分これはオフサイドだ。判定が覆ってオフサイドが認められ2:0⇒1:0に戻された。この瞬間かすかな希望を感じました。

 

VARが導入されてない時代だったらこの段階で日本は負けていた。

 


後半:10分過ぎ


日本は選手交代で三苫と浅野を投入。この後相手守備陣を脅かす場面が増えるようになった。


後半:27分

堂安を投入した直後にビッグチャンス到来。縦パスを受けた伊東がシュートを放つもノイヤーのファインセーブに阻まれたが、こぼれ玉を走りこんできた堂安がシュート。決定的なシーンだったけれどミスショットしてゴールネットの上。堂安頭を抱えて座り込む。ノイヤーと相手ディフェンダーがガッツポーズしてる姿が憎たらしかった。ここは決めなくては。

 

後半:29分


5人目の選手交代。南野投入。直後に三苫がドリブル突破から代わったばかりの南野にパスをしてシュート。またしてもノイヤーのセーブに阻まれるがこぼれた球を堂安が決めて同点ゴール!

 

ゴール!!!1:1の同点

 


後半:37分


キーパーに近い位置でフリーキックを貰い蹴ったのがディフェンダーの板倉。30メートル?か40メートルクラスのロングパスをボールの進行方向にボレーでコントロールしてそのままの勢いでゴール手前まで前進。相手ディフェンダーに肩を引っ張られながらもそのままキーパーと1対1まで迫り、ゴール手前の僅かに空いた隙間にシュートを打ち込んで

 

ゴール!!!2:1の勝ち越し

 

湧き上がるニッポンベンチ。あともう残り時間がない。38分、39分、40分になったところでテレビを消した。

 


お恥ずかしいながらこの後の時間に耐えられなかった。4年前ベルギーの猛攻を凌げなかった日本。今度もドイツが残り5分で猛攻を仕掛けてくるだろう。絶対にゴールを割られる。もうダメだ。持ちこたえられない。プレッシャーに押しつぶされて私はテレビを消してそっと外に出て行った。コンビニにでも行こう。でもそこで同点になったーと叫ばれるのも嫌だな。気が付いたら瑞穂公園辺りまで一人で歩いてる。残り5分といったってロスタイムあわせると10分くらいは外にいよう。家に帰ったら嫁や娘のがっかりする顔が目に浮かんだ。絶対に同点にされている。否、逆転されているかもしれない。

 


10分か15分くらい経っただろうか?


何分歩いたか分からない。兎に角不安だった。ニッポンのディフェンス陣がドイツの猛攻を凌げるとは思えなかったので不安で仕方なかったけど、家に帰ってテレビの電源を入れると日本の歓喜だった。勝ったんだ。

 

日本はドイツに勝ったんだ!

 

If you win or you lose. 
君が勝利するのか?
それとも敗れるのか? 

I'ts a question of honour. 
それは栄光への試練だ


自然とこの音楽が頭に流れる。I'ts a question of honourという曲だ。

 

ドーハの悲劇から29年。何にも変わっちゃいなかったと思った4年前と比べて日本の選手たちは皆力強くなった。後で映像を振り返るとロスタイムは 7分。ということは俺は12分以上も外で歩いてたのか。最後の最後まで選手を信用しきれなかった俺を許せと思いながら余韻に浸っていたが、ついにやったのだ。ニッポンがヨーロッパの強豪国をなぎ倒したのだ!

 

優勝候補の一角を倒して素直に嬉しいです。

 

夢にまで見た瞬間でした。その瞬間を目をつぶって外に出て行った自分の精神力の弱さを嘆くが、そこまで日本の守備力は今まで弱かった。でも今は違うと讃えよう。今日の勝利で日本のサッカー界の歴史を塗り変えたと思う。

 

日本がドイツに勝利するなんて1%も思っていなかった。


でも期待するからテレビを見る。

 

30年待ち望んだ瞬間が、今日訪れたのだ。こんなに嬉しいことはない。

 

 

こうなったらコスタリカもスペインも破って決勝トーナメントに出てもらいたい。ベスト16やベスト8なんて言わずにもっともっと上を目指せ。自分が生きている間にサッカーのワールドカップだけは、優勝することはないと思ってきたけれど


不可能なんてこの世にはないんだよ。

<A question of honour>スマホ再生OK

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コメント

  1. ビッグドリームより:

    昨日の日本の勝ちは未だ信じられません。

    逆転した後、テレビ見てられなかったですよ。

    ロスタイム中は吐き気しましたw

    ホントに勝てて良かったです。
    次回のコスタリカ戦も勝ち点3とれるよう応援しましょ!!
    ナイスゲーム!!

    2022年11月24日 PM 8:40
  2. ゴーニィ より:

    ビッグドリーム様

    貴殿はそれでもテレビしてたんですね。

    お恥ずかしい。私は外に出て歩いていました。そしたら、もしかしたらそこかしこのお家から歓声が沸き上がるんじゃないかとか。


    弱気にもほどがありますが


    ドイツってのはそんなチームです。

    コスタリカにも勝って、スペインにも一泡。今大会は行けるだけ行って欲しい。2002よりも高い頂に登れることを信じて応援します。

    2022年11月24日 PM 9:40

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