前代未聞の出来事
誤送金された金を使い込んだというアレですけど、最初このニュースを聞いた時に「違うんじゃないかな」って思ってましたけど、やっぱりかって感じですね。4630万円もの大金が誤送金されること自体がBIGニュースなので世間を騒がすのは当然と思うんですが、やっぱり全額ネットカジノで使い込んだわけではなかったようです。誤送金された金を全て失うとどうなるかってのは誰でもわかると思うんで、果たしてこの青年がそんなバカなことをしたのかな?ってのが第一印象。オンラインカジノをやれるような人物がそんなに簡単に4630万円も負けるはずがないだろうというのは当初から疑っていました。情報は何でも鵜呑みにするのではなくて、精査してからじゃないとダメ。多分この人は4630万円が自分の金じゃないことは分かってるけど、今自分の口座にある大金をどうにかして手に入れたい一心でマネーロンダリングを思いついたんじゃないかな?入金と出金を何度も何度も繰り返し、お金の出所が分からないようにしてたんだと思う。
ネットカジノをやってたこと自体がウソっぽいですね。
素直に返すのが惜しくて、頭をひねった挙句たどり着いたのがマネーロンダリングだったという感じです。同じ立場だったらどうするかなって考えてました。20代の頃なら確かに大金に目が眩んでどうにかバレないようにしようってことは考えたかも知れませんが、いくら考えたところで自分の金でないものは絶対に自分の懐には入らないと思い直して役場に返金したと思います。4630万円はいくら誤魔化そうとしても誤魔化せないほどの大金。なれど、善人の心を取り乱してしまうほどの魅力があったってことですかね。
懐かしの思い出話第3弾。節目の時期に来ていることは間違いないので、もうしばらくはこのペースにお付き合いください。書かずにはいられない何かがあるんです。家電メーカー勤務時代は、拠点は半田と岡崎だったけどテリトリーは最後まで知多半島で毎日100kmくらい店廻りしてました。東海市ではユニー太田川店。刈谷市ではサンテラス刈谷店(ユニーとサンテラスはおんなじ)。大府では早川電器商会。ここは二次卸でバッタに流すブラック企業でありながらも早川の名前がシャープを思い出させるのと、売上貢献度合いが絶大だったので忘れられません。そしてもっと忘れられない思い出は東浦にユーキチという名のホームセンターがありました。巨人にいた槇原投手の母校である大府高校の近くであります。ホームセンターで何で家電?と思うかも知れないが、当時ホームセンターは家電量販店並みにバカ売れした時代です。ここがリニューアルするとき家電製品を一括受注してその輸送中のことでした。軽トラよりもかなり大きいトラックで骨組にシートをかぶせてある車一杯に商品を積み込んでの輸送。パンパンに膨れ上がるほど積み込んでいた。
※早川電機⇒シャープ前身。創業者早川徳次
※バッタ店⇒ディスカウントショップ。当時はハローランドと杉山贈答
※ユーキチ⇒現在ではドミー東浦店
店に着いて検品する時、ハタと気づいた。
テレビがいっこ少ない。
まずい。どう考えてもまずい。積み込みの時は確かにあった。検品は店の人間が伝票見ながら商品の型式を読み上げて、私が数を数えて数量を発声する事で成り立つから、とっさに伝票の数量通りに答えてしまった。そうしなければこの場を乗り切れなかった。
人生最大のピンチだった。
端的に言うと、19C-R2Bという型式名の商品。伝票は10個となってるけど、現場には9個しかない。でも10と答えたので検品は終了した。何で10個が9個になってることが店の人間に露見しなかったのかというと納品したのはテレビだけじゃないから。トラック一杯に詰め込んだ商品を全て数量数えることはしなかったってのが現実。取引は信用で成り立っていた。その後、社に戻って出庫数量を確認したが、間違いなく10個積み込んでいる。摩訶不思議な出来事が私の目の前に立ちはだかった。上司も同僚も、もはや理解不能だった。しばらくした後だった。ある日のこと、「おーい、○○君。半田警察から、テレビの落し物があったといってきたぞ」。一瞬、耳を疑ったけれどすぐ状況が理解できた。俺はテレビを落としたのだ。すぐに営業所長が一言いってくる。今更御免といって馬鹿正直に店に出向いても、じゃあ検品の時はどうしたんだという話になるに決まってる。お前、そのテレビ自分の部屋にもって帰れ。
一見太っ腹の上司のように聞こえるかも知れない。
店に持って行かずに、自分の部屋に持って帰れやなんて。然しながらこのときの自分は、営業所長の言葉には悪意がはらんでいることを看破していた。何もなかったことにしてやるぞって言っているように思わせておいて、店からクレームが来たときは、全て俺のせいにして事を済ませる腹つもりだ。問題が手に負えなくなれば俺を生贄にするつもりだろう。その手には乗らないよ。勿論私にだって少しばかりの良心というものがある。今のままではじきに商品の欠落に気が付くから、そうなったらテレビを荷受した店長の責任となる。元々は荷物を積載し過ぎたことが原因のようである。フォロ車にパンパンに積み込んだ商品の中で、19インチのテレビが1個だけ骨組の間から抜け落ちて、田んぼの中にコロンコロンと転がり落ちたのだ。見つけてくれた田んぼの所有者が警察に届けてくれたんだと思うが、外箱はかなりへしゃがれていて、中の緩衝材も一部が破損していた。ここでテレビ自体の問題はないのか?っていう事が気になるかも知れないけど、当時の私の心境としてはテレビが映るのかどうかはあまり気にならなくて、外箱の凹みと中の緩衝材の凹みだけが気になった。このままでは商品を返そうとしても納品できない。
しばし思い悩んでいたが、ここでいいことを思いついた。
19インチのカラーテレビがバカ売れした時代であります。当時の家電業界には、標準価格よりちょっと安い価格を実際の店頭販売価格にしてまして、これを○Sと言いました。マルエスと発音します。○S×8掛けか7.5掛けが小売店への納入価格。19C-R2Bのマルエスは49800円だったので、49800*0.8=39840(サンキューハチヨンマル)がユーキチへの納入価格。これを商談時に39500円に引き下げました。するとユーキチの購入担当バイヤーは大いに喜んで、この商品を39800円で売ると言います。よそが49800円で売ってる時代なので、39800円にするとバカ売れするらしい。300円の儲けでいいのか?って聞くと、持ち帰りならそれで十分だという。不思議なもんで、39840ならサンキュッパで売ることは絶対にない。でも39500ならサンキュッパで売るらしい。
39500円なら39800円で売るらしい!
一般の電気屋さん⇒○S×0.8が納入価格
ホームセンター⇒○S×0.8が納入価格
家電量販店⇒○S×0.75が納入価格
栄電社⇒○S×0.7が納入価格(最恵国待遇)
ホームセンターが如何に冷遇されてたかが分かります。数の論理からいえば、HCの仕入れ価格はもっと安くなって然るべきなのですが、家電メーカーによる得意先ランク付けがあり、家電を専門に生業としてる店舗とは同格には扱えないといった不公平概念が浸透していました。これにうすうす気づいていたバイヤーもいて彼らからは常にNEBA加盟店との仕入れ価格差を訴求されまして、値下げ要求に応じると飛び上がって喜ぶのでした。今回はそうした心理を上手く利用しての悪巧みと思います。
こいつら、どないやねんて思ったけれど、考え方は色々あるらしい。配達なら300円の儲けではやらないけど持ち帰り販売ならたった300円の利益でもやるらしい。利益率がいくらとかは重要ではなくて、現金を店に入れることが重要なのだと私に教えてくれました。究極の薄利多売を見た感じですが、ここで持ち帰り販売という言葉が私の胸に脳に心臓にキュンと突き当たるその心は、自分で売ればええねんということ。箱と緩衝材がないんなら客が買った商品から合法的に抜き取ればええんです。そしらぬ顔してこう言い放ちます。
「店長、今度の日曜日、私販売応援に来ますわ」。
「えっ!そうなん。メッチャ嬉しいわあ」。
相手を騙すのもチョロイもんでございます。当日の朝、開店と同時。49800円のカラーテレビを39800円で売ると、テレビに群がるお客さんで蜂の巣状態でした。次から次へとテレビの前にお客さんが集まってハイ売れました。持ち帰り。どうやって家に帰るかを確認し、乗用車ならばお客さんの車までついていってお手伝いです。19インチのテレビといいましても、大袈裟な緩衝材が入った外箱は非常に大きいので、箱のまま乗用車には積めません。箱から出して後部座席に積み込みますと、「お客さん、箱要らないっすよね」。「ああ、捨てといてくれ」と仰るので、有り難く箱と緩衝材をゲットします。
当時はね、バックヤードに防犯カメラなんか付いていなかったんで、箱と緩衝材に、転がり落ちたテレビを詰めましてあとはバックヤードに戻すだけ。あんた何?落っことしたテレビの中身は問題ないんかって?
知らんがなそんなもん。
大体テレビは頑丈にできてるから、田んぼの中をグルングルンと転がり落ちたくらいでは壊れへんやろ。このようにして、商品をいっぱい詰め込み過ぎて犯した過ちは元通りに復元し、事無きを得たのです。当時は防犯カメラなんてなかったし、カラーテレビは持ち帰り販売という売り方、買い方が当たり前の時代やったからの離れ業。今ならそんなことできんけど、いい時代やったなあ。いつまでもいつまでも私の心は
悪代官ゴーニィでございます。
古き良き時代ならではのお話ですね。今では在庫置き場なら防犯カメラで見張られて、何をするにも不正の働く余地はないと思うし、在庫が1個足りないってことはすぐに露見しただろうから私のように難を逃れることはできなかったと思います。正直になくしたとしか言い訳でのできない事態に追い込まれ自分のクビも危ういことになったのではと想像していますが、ここで気になるのはテレビの中身のことでしょうね。田んぼの中を転げまわった商品を掴まされたお客さんは不幸なことこの上ないですが、当時は新品の家電製品とはいえこのようなまがい物も有り得たのです。緩衝材で守られた梱包だから、少々転がり回っても壊れてはいないだろうと今でも思っていますが万が一何かの不具合があったのなら購入したお客様は不幸。30年以上昔の話ですが、当時東浦近辺でシャープのカラーテレビ19C-R2Bを購入して新品不良だったわっていう人がいれば、
それはもしかしたら
私が落っことしたテレビなのかもしれません。
テレビを落とした人がこの世にいるのかどうか知らんけど、
当時この出来事は営業所内では末代まで語られる大事件でした。
コメント
すごい!頭の回転の早さに驚きです
転んでもタダでは起きない、ピンチをチャンスにする精神は昔からなのですね
冒頭の方に書いてあった39500なら39800で売る話を聞いてひとつ思い出しました。
小売ではよく398とか498とかで売ることが多かったのですが、最近では399とか499とかで売ることが多いみたいです。何故かその方が売れるとのこと。消費者心理に基いてるらしいですが不思議なものです。
(最近歯痛でずっと寝たきりでブログ読みに来れませんでした。更新が多いとのことですが抜歯できたらまた読みに戻ります。口腔外科ってめちゃくちゃ混んでるんですね、、、もう死んじゃいそうです涙)
ピカ吾郎様
歯でそこまで寝込むとは。お大事に。
いつの時代も値段に関する創意と工夫はあるんですねえ。昔は99800円のことをクルクルパーって呼んでバカにしていました。99900の方が良く売れるだなんて思ってもみなかったけれど、10万円は高いけど99900は安いという印象を与える考え方は1/320と言わずに1/319と言い続けるパチメーカーの発想に似ております。
この時は本当にどうしようかと悩んでて、それが「持ち帰り」って聞いたときに閃きましたねえ。持ち帰りなら絶対箱が貰えるなあ。
テレビを落とした人なんて滅多にいないと思うから、今回のお話は相当にレアで御座います。昔のことはよく覚えているっていってもそれはシャープ時代のことばかりなんですよねえ。
何故でしょう?
己の体を過信してはダメですね(とほほ)
シャープ時代のことばかり覚えているのはやはり「目の付け所」の良さからくるものかと( ˘ω˘ )
テレビ落としの話とても面白かったです。
こういったどうしよう。ってなるミスって人生で少なからずあると思うのですが、落ち込まずに考えられるところと面白くまとめられるところが凄いです。
私は昔のことがわからないので気になったのですが、昔と今の時代どちらが好きですか?好きというか楽しいというか難しいですが、どちらがいいなぁ。ってのはありますか?
私は日本製のもの殆ど買ってませんね...テレビも洗濯機も冷蔵庫もスマホも全て中国です。
テレビに関してはワンタッチでAmazonビデオやネットフリックスがみれて4Kチューナー内蔵、洗濯機も国産メーカー同じ機能で格安。
祖父母世代は中国製はすぐ壊れる。ってよく言いますが、全く壊れず高機能で、今日本のメーカーは大変なんだろうなぁ。と思います。
ピカ吾郎様
目の付け所がシャープです。
ってその言葉知ってるんですねえ。左右開き冷蔵庫が発売される頃、そのキャッチフレーズが採用されました。あの頃は商品の不良率は高かったけれど、本当に凄い機能を持った商品ばかり発売するので社員としては鼻高々。パナソニックよりもこっちの方がええやろみたいに思ってた時代もありました。
社会人になってはじめての会社の影響を一生受けるらしいです。
処女を失う時の気持ちと一緒。
ユリア様
どっちが良いでしょうね?
これは自分でも分からないです。当時は韓国製品なんて下の下。フナイとサムソンが同じレベル、同じ扱い、同じ値段で売られていた時代。フナイとサムソンじゃあねえ?っていうのがみんなの思いで、安くても誰も見向きもしない時代。
ソニーとパナソニックが世界一じゃないなんて。
ソニーがアップルに負ける時代。
パナソニックがサムソンに負ける時代。
そんなこと全く考えられなかったすわ。家電メーカーの光と影を見た30年だったけれど、日本の家電メーカーが韓国の家電メーカーに負けたというのが、日本の低成長時代の象徴。何故こうなったかは誰かが解明せねば日本の明日はない。韓ドラは面白いのに、日本のそれは全く面白くないことと無関係ではないように思います。
どっちが良いというよりも、昔に戻ってという感じです。