去年と今年の比較
10月6日で大谷選手の2022年が終わりました。残念ながら35本塁打、100打点という区切りの数字には届かなかったし、ラスト22試合本塁打なしというのはちょっと予測しにくかったけれど、後半の打撃をテレビで見ていた印象は、甘いボールは打ち損じてる。甘い球をファールした後の球はボール球に手を出しているということで多分最後まで本塁打は出ないんだろうなと思っていましたが、その過程で「あわや」は何度かありました。今年の大谷選手の打撃は最後の最後まで、飛ばないボールに苦しんだという印象。特に左中間方向に捉えたホームラン性の打球が去年までは入っていたかなあというのが何度もあったので反発係数の低下は補正して数字を見る必要があります。
一般的には
打者大谷は去年の方が良かった。
投手大谷は今年の方が良かった。
ですが私の評価は真逆ですね。
打者大谷は今年の方が良かったですね。
また大谷の記事か?というなかれ。去年もこの時期に大谷総集編というのを「ロジャー・マリスの供養」と題してUPしました。まさかその翌年に本当にマリスを供養する出来事が起きるとは思わなかったけれど、大谷が破るであろうと思われた年間62本塁打をアーロン・ジャッジが破ることになって今年のMLB、特に東海岸は大騒ぎ。ルースの再来、マリスの再来。否否否マリス以上の真打ち登場でニューヨークは大盛り上がりです。打者大谷のどこが良かったかというとまずは次の画像をご覧ください。
2021年と2022年打者大谷の成績です。ちょっと離れたところに2004年の松井秀喜の数字を列記していますが、
打数が586と584
塁打(TB)が304と305
長打率(SLG)が.519と.522
ということで打数と塁打がほぼ同じ数字でした。去年と比較すると明らかに三振の数が減ってますし、その分打率が.257⇒.273まで向上。三振の減少はもろさの改善に繋がっており相手投手が嫌がる打者になりつつあることを示しています。然しながら松井と比較すると断然違うのは三振の多さであり、この点が松井は.298であったのに大谷は.273にとどまっていると言えましょう。三振の数が減れば減るほど私好みの打者になりますが世の中の皆が私と同意見とは思わないのでこの点はあまり主張しないでおきます。ただ打数と塁打の数が松井のキャリアハイと同じ数字だったというのは興味深いですし、大谷が本塁打だけではなくて総合的に「良いバッター」になってきたという実感はテレビを通じて感じておりました。実際に今年の彼の打撃成績はもっと評価されて良いんです。
何故かというと、ここ何年かのメジャーの内野シフトは極端に左打者には右寄りになっており二遊間方向に飛んだ痛烈な打球が野手の正面を突いてアウトになるケースが頻発。私が見ているだけでも10個くらいはあったかなあという印象で詳しく調べればシフトのおかげでアウトになった打球が20個くらいで、その反対にシフトの逆を突いて安打になったのが10個くらい。つまり打数同じで10安打くらいは損してたかなと思います。これについては詳しく調べてくれたサイトがあってそれを見てもやはり10安打の欠落があったという指摘でした。2023年からのMLBの公式試合では、極端な内野シフトを敷くことができないルールとなったために、来年は大量に安打が量産されるでしょう。
(1)内野の守備陣形は1、2塁ベース間に2人
(2)2、3塁ベース間に2人配置が義務付けられました。
これによってセカンドベース右に飛んだ打球は、ヒットになる確率が高くなるので大谷選手の来季の打率はほぼ確実に上がります。どれくらい上がるかというと
今年586打数160安打⇒.273
来年586打数170安打⇒.290
飛ばないボールの影響を強く受けた年でした。2004年の反発係数と今年とではどれくらい違うのか分かりませんが、恐らくは今年の方が低いんだろうなあってのは各打者の本塁打の減少とか、チーム打率の低下を見ていて思います。1試合平均の本塁打数は2004年が1.12で今年は1.07なので両者の反発係数を比較するのは極めて難しいですが少なくとも去年よりは落ちてるし、2019年と比較すると激減しています。
1試合平均本塁打数
2004年⇒1.12
2019年⇒1.39
2020年⇒1.28
2021年⇒1.22
2022年⇒1.07
2019年から打者のアッパースイングが目立つようになり本塁打の総量が飛躍的に増えたのですが、そのため反発係数を落として本塁打の増加に歯止めをかけたのがMLBの意図したこと。そうした条件によって大谷の本塁打が減少したと言えるし去年までの試合球であれば彼の成績はもっと良かったはず。従って今年の彼の成績は実質的には
打率.290
本塁打40
打点100
2021年よりも打撃成績は良かったと思ってます。
オールスター前と後との比較では去年はオールスター後に失速したのに対して、今年はオールスター明けの方が成績が良いのでこの点でも去年よりも今年の方が良かったと思っています。彼は元々ジャッジやトラウトほどのホームランバッターではない。去年の前半が異常に良かっただけで、今年の成績が本来の実力と見て良いのでしょう。ボールの反発係数がまた良くなれば本塁打を量産することもあるからその時に期待します。
問題は投手大谷の方ですね。
この数字を見れば
(1)奪三振の増加⇒SO
(2)被打率の低下
(3)被本塁打の減少⇒HR
(4)与四球の減少⇒BB
(5)投球回数の増加
(6)防御率の大幅低下⇒ERA
悉く数字が良い方に向かっているので一見すると誰が見ても去年よりも、今年の方が良いと言います。
ですが、それはあくまでも机上の理論。数字を事細かく分析すれば多分目に見えない欠点が露出されるだろうと思うのは、実際にライブで大谷が投げる試合をかなり見てきたから。
先発登板した28試合の対戦相手別のデータですが、これを見ると何試合かは打ち込まれたことがありそれをピンク色の囲みで区別しました。4月のレンジャース戦と5月、6月の東海岸シリーズ。そして私が一番印象に残った試合が
オールスター明けの先発
10勝目に大手をかけた試合
7月22日のアトランタ・ブレーブス戦です。
今年の投手大谷を語るのは、この試合だけで良いですね。9勝⇒15勝。防御率3.18⇒2.33は投手としての飛躍を示す数字ですが、それはあくまでも素人考えで実際には去年と今年を比べるとどっちが良かったかは微妙です。去年まではパワーピッチャー大谷。今年はスライダーに頼る年。真っすぐで押し込んでスプリットで三振を取る彼が、何故投球スタイルを変えたのかは本人に聞いてみないと分かりませぬが、危うさを感じた1年でした。7月のアトランタでの試合は10勝目をかけて初回から物凄いピッチングでした。1回から6回までは完璧に打者を封じ込めて圧倒してましたが問題は7回。
スライダーが抜け始めます。
この試合はリアルに見てたんですけど、前半で投げ過ぎたスライダー。指に負担がかかり6回、7回辺りから抜けはじめ7回の先頭バッターに投げたスライダーが曲がらずにフォアボールになったことが嫌な予感の始まり。次の打者がマット・オルソン。去年までアスレチックス戦で対戦していたホームランバッターですが、真ん中からインコースに食い込んでくるスライダーを捉えられてライトスタンドに飛び込む2ランホームランでした。多分外のボールゾーンから曲がって外角いっぱいに決めようと思ったボールですが、これが真ん中から中に入ってきた失投でした。今年の大谷はスライダーの投げ過ぎで6回当たりから捕まるシーンが多かったです。スライダーは強力な武器ですが、前半で投げ過ぎると後半は抜けて四球になったり、痛打される事が多くなる。これは本人も分かってるけれどエンゼルスの打線が弱いからという側面もあり複雑です。
後日談で大谷本人も語っておりましたが、味方が点を取ってくれない。ブレーブスとの試合も6回まで0対0で点が取れない状況で、大谷自身も1点もやれない精神状態に追い込まれていた事がスライダーの多投につながった。一番被打率の低い球種がスライダーなので、それに頼らざるを得なかった今年の大谷投手。来年以降もスライダー投手として生きるのであれば、投手大谷は非常に危ないです。
真っすぐは160kmでも被打率は.240程度あるんです。
そのことが彼をスライダー投手に追い込んでいったと思うしこれが続くと危ない。真っすぐの制球能力が高ければそんなに打たれないと思うんですけど大谷はそれほど良くないから甘くなった真っすぐを捉えられている。だから抑える確率が高いスライダーの多投につながっている。ここを見直さない限りは来年はヤバい気がしますね。外角低めにズドーンと160kmのストレートが決まればそうそう打てないはずだけど、テレビで見ている限りはそういうシーンを見たことがないので、彼は真っすぐの制球には自信がないんだと思う。外角低めに真っすぐでストライクを取って、真ん中にスプリットを投げればまず大丈夫なはずだけど、それができない状況にあるのが私にとっては不安ですね。
来年以降の投手大谷はどんな姿を見せるのか?
右打者にはインコースのシンカーで追い込んでスライダーで三振を取る。左打者にはカーブから入ってカットボールで追い込んでスプリットで三振をとるというのが今年の配球。それがどう変化するのか楽しみですが、徐々に徐々に投手大谷の選手寿命は終わりに近づいているような気がします。どこまでやれるでしょうか。
2022年の投手大谷と打者大谷の総括でした。