世界イチ
僕が野球に目覚めたのは小学生の高学年になってからのことですね。それまでは絵を描くことに夢中で画家になることを夢見て生きてきたような人生でしたからどちらかというとスポーツは苦手。いやいやいやスポーツだけでなく音楽も苦手。小学生の頃の体育と音楽は毎年のように通信簿は1か2という低レベルな人間でしたから、スポーツには一生縁がないなあって思ってたんですけど、何でか知らんけど小学生の高学年になってからプロのスポーツに関心を持ち始めたんです。これはおじいちゃんと一緒にテレビの前で横綱大鵬の相撲に夢中になったのが原因でその時おじいちゃんの解説が上手かったので論理的に勝てる方法ってあるんだなってことに気付きます。スポーツは運動神経だけで決まるもんやと思うてたのにそうじゃないことを知って相撲とか野球とかに興味を持ち始めるようになったんですわ。
大鵬が何で勝てるのかって自分では分からなかったけど
おじいちゃんの解説を聞いて妙に納得した。
スポーツは運動神経の良し悪しだけでは決まらない。
論理的にやれば勝てる。これで俺にもワンチャンスあるんかと思うて興味を持ち始めたのが相撲だったけれどそれ以上に私に影響を与えたのがアニ メ「巨人の星」やった。ティーンティティッティティー ティーティーティーティティティ。巨人の星テレビ放送は1968年の3月から1971年の9月までとなってるから見始めの頃はまだ小学低学年。見てた時期は星飛雄馬の消えるボールとかバットに当たらないボールはインチキやなと思うてたさかい、純 粋に野球を楽しんだ訳じゃないけれど、そのドラマに出てくる登場人物が川上哲治であったり、王、長嶋、柴田、高田、土井、黒江、森。インチキアニメでありながらも時折実際のプロ野球であった話が出てくるものですから「読売巨人軍」というものに興味を持つキッカケにはなったと思う。
1968年が巨人のV4
1969年が巨人のV5
1970年が巨人のV6
1971年が巨人のV7
1972年が巨人のV8
1973年が巨人のV9
巨人の星が終わった翌年の1972年が私の野球開眼の年。そして1973年が運命の甲子園球場での最終決戦。
つまり巨人の星という番組は巨人のV9時代とリンクしているし、また私が野球に興味を持つようになった時期ともリンクしております。それほどまでに巨人のV9は私のその後の人生に多大な影響を与えておりまする。
1番センター柴田。法政二高のスーパースター。トレードマークは赤い手袋。盗塁王。速球にめっぽう強くて松岡弘の剛速球にも負けなかった。俊足、巧打のスイッチヒッター。当時スイッチヒッターはこの人くらいしかおらんかった。
2番レフト高田。レフト線に飛んだ打球を2塁で刺す壁際の魔術師。打っても殆ど引っ張り専門でレフト線への打球ばっかし。強肩・俊足の1、2番コンビは最高にして最強。
3番ファースト王。世界の王貞治。長嶋の前に王がいたからこそのON。1973年と1974年の2年連続三冠王の打撃をリアルに見ていた自分としてはその後に出てくる松井や村上よりもやっぱり王がナンバー1。日本シリーズの9回表に山田久志から放った逆転スリーランホームランは良かったなあ。
4番サード長嶋。1974年に引退したから僕が巨人の試合を見るようになった頃には既に盛りは過ぎていて天才打者としての片鱗はなかった。落ちぶれた彼の姿を見ることは辛かったけど、後の指導者としての長嶋もまた偉大な存在。だから打者長嶋というよりも10・6決戦。10・8決戦のときの方が印象は強い。
5番ライト末次。大器晩成末次利光。カルビーの野球カードにはそう書かれていた。30歳くらいから才能が開花して巨人の5番打者として不動の地位を築くが引っ張りが多い打線の中で、彼の右打ちは天下一品。ライト前ヒットとかライト線の二塁打ばっかし。
6番セカンド土井。山椒は小粒でピリリと辛い。カルビーの野球カードにはそう書かれていた。巨人の星のというアニメの中で、阪急との日本シリーズ。阪急優勢のシリーズだったけれど土井の走塁が流れを変えたという解説があったことをかすかに記憶しています。バックホームして土井がキャッチャーの股間に一瞬だけ足を入れて弾き飛ばされるシーンがありました。誰が見てもアウトの判定を主審はセーフ。これに激怒した阪急ナインがその後自滅して巨人に逆転される。MVP級の走塁があったお陰で巨人が勝ったというのを巨人の星で知りました。
7番ショート黒江。ここぞというときのクラッチヒッターであり、逆転打。サヨナラヒット。サヨナラホームランは黒江の代名詞。主役は柴田や高田であり王や長嶋なれど、試合を決める大事な場面で活躍するのはこの人でした。子供心にもこの人の勝負強さは一級品だと思ってました。
8番キャッチャー森。後の西武の監督。森の現役時代には後釜を期待された新人捕手が何人も入ってきたけれど、悉く後輩を潰して正捕手の座を何年も明け渡さなかったということが本人の談話で語っておりました。野村克也や古田のような派手さはないけれど、巨人V9の影の立役者。
9番ピッチャー高橋一三。この投手が星飛雄馬のモデル。当時は高橋、堀内、倉田、城之内の4本柱。
ONで沸いたニッポンのプロ野球ですがON以外にも当時のV9ナインには個性豊かな脇役が揃っており、この人たちがいたおかげで9年も連続してセ・リーグを制覇。9年も連続して日本シリーズを制覇できました。だから当時のV9戦士とかアニメ巨人の星の影響を受けて、画家になる夢から野球への情熱に変わっていく。僕にとって1970年代はそんな時代でした。
小学校までは家から遠かった6年間でしたが、その代わりというか中学は田んぼを挟んで目の前。野球部員が打った打球が家の前の田んぼに転がりまくってるという環境だったので、軟式野球のボールには困ることがなくて家には100個くらいの軟式ボールがありました。当時はA、B、Cの3種類あってそれぞれ役割が違うけどAは1番小さくてCがひと回り大きいボールでBは準硬式野球ボールでした。もっぱら田んぼに落ちてたのはCというボールでしたが、やっぱりボールは小さい方が良く飛ぶんですね。日本の硬式ボールよりもメジャーの方がちょっとだけボールが大きいので向こうに行くとホームランが出難くなるわけですが、ボールが飛ばないのは大きさだけではなくて反発係数の違いもあるようです。硬式ボールの中心には芯となる小さなボールがあってそれに繊維を巻きつけてグルグル巻いていくけれど、その時きつくしっかり巻いたボールとしっかり巻いてないボールとでは反発係数が変わるのでボールの飛び方も変わります。日本の職人さんは几帳面なので反発係数に差が出にくいけど、向こうの職人さんたちはアバウトなのでボール毎に反発係数が違うらしい。まあこれは反発係数の基準に収まるものだけを試合で使うから問題ないんでしょうけど。ここでのお話は軟式ボールにはAとCという大きさの違うボールがあって、ボールは小さい方が良く飛ぶってことを実践で感じていたということですね。
軟式ボールのAとC
Aの方が小さい⇒ボールがよく飛ぶ
Cの方が大きい⇒ボールは飛びにくい
硬式ボール
NPBの硬式ボール⇒反発係数が大きくてよく飛ぶ
MLBの硬式ボール⇒反発係数が小さくて飛びにくい
※現在ではABCは廃止されてMとかDに変わってる。
軟式ボールがどうやって作られてるかを見たことはないのですが、硬式のボールは取引先で生産してたので実際に見る機会がありました。大阪の東成区ってところに「スミヤ」という企業があります。大阪で西成区、東成区と言えばちょっとした怖い場所なんでスミヤに行くときは絶対に事故だけは起こすなよと散々言われて行ってたわけですが、この時の心理状況はかつての部落と似てますね。何かあったら近隣の人たちが一斉に押しかけて大騒ぎする。裁判沙汰になる前に落とし前をつけられるらしいので行くことをためらった時期もありましたが、そこはそこ。仕事上でのお付き合いなんで行かないわけにもいかずスミヤに足を運んでいると萩本欣一さんのゴールデンボールを見せてくれたりとか、色々と面白いことにも遭遇します。野球のボールに名入れをするためにタンポ印刷機を買うんですけど仕事の現場を見ておりますと結構アナログでしたわ。野球のボールは直径が73~74ミリとかで決められているけれど、これは芯に糸を巻きつけている職人さんの手作りなんで大きさも反発係数も全部バラバラよ。その中で決められた範囲に収まるものだけをミズノに納品して実際の野球場で使われるということ。だから厳密に言えば同じボールはいっこもないし、ホームランになるならんの瀬戸際が結構ボールの影響だったりするので、この工場は喜怒哀楽のドラマを作り出している現場といっても過言ではありませぬ。
ホームランになるかどうかは
(1)野球のボール大きさで変わる
(2)野球のボールの反発係数で変わる
(3)球場の広さで変わる
(4)風が逆風か追い風かで変わる
(5)気圧が低気圧か高気圧かで変わる
(6)投手の投げる球の質にも影響される
風の影響を受けることは誰にでも分かると思いますが一般的に海の近くの野球場は逆風なのでホームランは出難いです。千葉マリンも逆風だし甲子園はライトからレフトへの浜風が吹き荒れます。サンフランシスコにあるAT&Tが海からの逆風を受けてライトスタンドへは殆どホームランが出ないってことを散々書いてきましたが、この球場はもうひとつの逆風があり、それが気圧の影響です。海よりも低い位置にあるAT&Tはかなりの高気圧であるため空気の抵抗をモロに受けますから、逆風と高気圧の影響でダブルパンチ。
酸素の多い低地⇒高気圧⇒空気抵抗が大きい
酸素の少ない高地⇒低気圧⇒空気抵抗が小さい
空気抵抗が大きいAT&T⇒ホームランが出難い
空気抵抗が小さいクアーズフィールド⇒ホームランが出易い
※AT&T⇒現オラクルパーク。サンフランシスコ・ジャイアンツ本拠地
※クアーズ・フィールド⇒コロラド・ロッキーズ本拠地(山の上にある)
ホームランが出るかどうかは色んな要素が絡み合っているので、去年の村上の56本塁打と大谷の34本塁打のどちらが価値が高いかは単純に比較することができませんが、今回のWBCを見る限り大谷の放つ打球は他の誰よりも次元の違う打球速度になってますね。村上選手が海を渡ればどうなるのかが不安になってきました。松井や福留や岩村や日本が誇る長距離砲が海を渡れば大したことなかったので村上もまた同じ運命をたどるような気がして仕方ありません。
阪神のバース54本
近鉄のローズ55本
西武のカブレラ55本
外国人選手で年間50本以上ホームランを打ったのはこの3人しかいないんですけど、残念ながらこの3人はメジャーで年間フル出場した年がないのでNPBとMLBでどれほどの差があるのか比較できんのですわ。唯一比較できるのは松井秀喜ってことになるんですけど、この選手の本塁打の落ち込みは置かれた環境に依るところが大きかったので、これを大谷と比較するのは困難。松井はNYYに行ってからレギュラーの座を確保するために本塁打を捨ててコンタクトヒッターに徹していた。ヤンキースの4番、5番の重責とエンジェルスの2番では重みが違う。となるとやっぱり比較対象になるのは西武のオレステス・デストラーデってことになるんです。過去にも書きましたけど、西武の黄金時代を支えたカリブの怪人の強打は巨人ファンとしては殊更怖かった。日本シリーズ第1戦で槇原を完膚なきまでに打ちのめした特大ホームランは私の脳裏に今でもこびりついている。恐ろしいバッターでした。
デストラーデ
日本時代400打数で40本ペースで量産
フロリダ・マーリンズ時代
569打数145安打。打率.255、打点87、本塁打20
大谷翔平の2022年と2023年
537打数138安打。打率.257、打点100、本塁打46
586打数160安打・打率.273、打点95、本塁打34
2年間1123打数で80本塁打
つまり大谷の本塁打数はデストラーデの本塁打のほぼ2倍ですね。
この数字を見るだけでも、大谷の数字はとてつもないです。ただし数字を公平にみようと思ったら使用球と当時の投手の成績。球場の広さまでを考慮しないといけません。使用球と投手の差は私では比較できないのでここでは球場の差だけに特化します。
デストラーデがフロリダ・マーリンズにいた時の野球場。プロプレイヤースタジアム。センターの左に410と434という数字があるけどこれが問題。この球場はアメフトのマイアミ・ドルフィンズの試合場でもあるので野球とアメフトの共用スタジアム。この410-434という場所からアメフトの器材を取り出して試合をやるのでこの一角が非常にセンター奥深い位置にありました。434フィートは434×30.48で132.3メートルということで非常にホームランが出にくい場所。この三角地帯が三塁打多発地帯になっておりバミューダ・トライアングルと呼ばれます。
バミューダ・トライアングルがあったせいでデストラーデの本塁打も何本かは阻まれたのではないかと思っています。
これに対してエンゼル・スタジアムはライト330フィートだし、左中間も一直線になっているんでプロプレイヤー・スタジアムよりは断然ホームランが出やすい構造ですね。
両球場を重ねてみます。こうすると断然プロプレイヤースタジアムの方が本塁打が出難いってことが分かりますから、その分割り引いて考えなくてはならんのですがデストラーデはスイッチヒッターで引っ張り専門ということを加味すると年間5本くらいというところでしょうか。勿論ホームだけではなくてアウェイでもやるから年間162試合の内の半分が本拠地でありそのうちの左打席に立った時だけの影響ですね。デストラーデがエンゼルスにいて560打数で25本塁打だたっとすると、大谷は彼の1.6倍本塁打を打ったということになりますね。
エンゼル・スタジアム本拠地
大谷⇒560打数で40本塁打
デストラーデ⇒560打数で25本塁打
にしてもカリブの怪人デストラーデの1.6倍って数字はとてつもなく凄いです。
そこで今回のWBCでは村上選手の打撃に注目しているのですが、彼の打撃能力は日本では最高峰だけどやっぱりメジャーでは難しいかなという印象ですね。球場にも依りますけど今彼が海を渡れば本塁打は年間20本くらいしか打てんかなと思うんですね。大谷が打席に立ったときは日本人離れしててハリウッドスターかと思わんばかりの雰囲気ですが、村上が打席に入ると昭和のニッポン人って感じ。現時点では大谷と村上を比較するとレベチだと思うし、打球速度の違いは明確。やっぱりいくら日本の狭い庭と飛ぶボールで本塁打を量産しても本場アメリカに渡ったらダメなんやろねを感じたけれど、こればっかりは本人の資質によるところ大なので、今後練習を積んでも。今後打撃能力が今よりも向上したとしても、本塁打を打つペースはあまり変わらないと思います。それほどまでに今回は
大谷と村上の打撃能力の差を見せつけられました。
やっぱり大谷に敵う日本人は今のところ皆無ですね。
村上選手を擁護する日本人ファンはそれを否定したいだろうし、今はただ単に調子が悪いだけ。調子が上向けば村上の方がと思ってるかもしれないけれど、打球速度の違いを見てれば両者の違いは明確。私の話が覆る可能性は限りなくゼロに近いのではと思ってます。大谷は2021年にブレイクしたと思ってる日本人は多いけど、彼はメジャー1年目には326打数で22本塁打ということで14.8打数に1本の割合で量産しています。その時から既に年間50本打つ潜在能力を見せつけています。最近の2年間はAt Batの数が多いだけです。
ホームランになるかどうかは
(1)野球のボール大きさで変わる
(2)野球のボールの反発係数で変わる
(3)球場の広さで変わる
(4)風が逆風か追い風かで変わる
(5)気圧が低気圧か高気圧かで変わる
(6)投手の投げる球の質にも影響される
(1)、(2)、(3)、(6)までがメジャーではマイナスに働くというのがポイントですね。
大谷と村上ばかりに目が行きがちな今回のWBCですが本題は日本が勝てるかどうかということですからここまでは前置き。日本は勝てるのかって聞かれたら最後の最後は運次第。アメリカもドミニカもベネズエラもプエルトリコも強力なメジャー軍団を揃えているので容易には勝てないでしょう。それ でも私は日本が頭ひとつリードしてると思うのは先発投手、第2先発投手、ブルペン投手陣の層の厚さ。大谷、ダルビッシュは多分16日以降の 登板はないと思うけど、ラスト2試合には佐々木、山本の2枚看板がいて宮城、今永、高橋(ヤクルト)の第2先発が控えている。ブルペンには度胸 満点の伊藤大海と宇田川がいて、剛腕山崎颯一郎と高橋宏斗がいて最後の最後には大勢がいる。
先発が2枚
後発が3枚
中継ぎが4枚
抑えが1枚
付け入るスキを与えないカードが10枚も手の内にあるというのは頼もしい。そう簡単に大量失点はありますまい。
ほぼ初見の投手が10人で10人とも剛腕ですから、如何にメジャーの打線が強力といえでも初めての対戦でこの10人を打ち崩すのは無理なんじゃないかと思うくらい素晴らしい。今回の日本代表の投手陣は、WBC、オリンピック通じて過去最強の陣容だと思う。その中でもまず最初に注目したのは佐々木朗希。164kmの真っすぐと140km台後半のスプリットは容易には打てないと思うけど、それでもメジャーのバッターは真っすぐだけに照準を合わせてきて1、2、3で振るから案外打たれてしまう。チェコ戦で163kmの真っすぐをレフト線に痛打されたのを見ると佐々木といえども油断はならないし、大谷とかアルカンタラのメジャーを代表する剛球投手でも真っすぐの被打率が持ち玉の中で一番高いことはありがち。アルカンタラも真っすぐよりもチェンジアップの方が被打率が低いし、大谷も真っすぐの被打率はそれほど低くなくて1番被打率の低い球種はスライダーである。だから完璧に抑えられる保証はないけれど、仮に失点しても早めに第2先発につないで最小失点で試合運びができると思っている。
予選リーグの4戦を見て1番良かったのは山本由伸。この人の信頼度は相当に高いし、今回は最後の決勝の舞台で使うと思う。
山本さんに関しては早くメジャーに行って欲しいですね。既に完成されているし、今すぐメジャーに行っても15勝くらいはできるからどこの球団も山本を欲しがるのではないだろうか。山本はゆっくりとしたモーションからピュッと投げるからバッターは戸惑う。佐々木は速い球が来るぞ来るぞと思わせといて速い球が来るからバッターは用意ドンで振ってくる。だけど山本の場合はゆったりとした投球フォームで、緩い球を投げるのかと思わせといてピュッと154kmの真っすぐがくるから打者はタイミングを合わせられない。緩いカーブを巧みに使うので実際に速球を待ってるとカーブでやられ、カーブを待ってると速球でやられ。
山本の場合は
(1)緩急の差で戸惑う
(2)左右のコーナーに真っすぐが飛んでくる
(3)真っすぐは高めに、スプリットは低めに
緩急と左右と高低と。全ての面で打者は手元を狂わされ、投手の術中に陥ってしまう。今回の山本由伸投手の投球を見てると、このタマは打者はまず打てないですわ。それほどまでに完成度が高いと感じたので、今回の日本は決勝まで行けば多分大丈夫と思う。問題はその前の準決勝で負ける可能性があるのでその日に打線の奮起に期待したい。
(1)センター ヌートバー
(2)ライト 近藤
(3)指名打者 大谷
(4)サード 村上
(5)レフト 吉田
(6)ファースト 牧
(7)セカンド 山田
(8)ショート 中野
(9)キャッチャー 中村
このメンバーがベストオーダー。
今回の日本代表は7番、8番、9番にタイプの異なるバッターを並べられてるのが素晴らしい。7番山田は走者を帰す役割。8番中野から始まった時は中野の巧打と足と選球眼が生きる。彼は出塁率が高いけど塁に出れば単なる8番に非ず、相手投手は中野の足を警戒するので、後続の打者に対するカウントを悪くする。ここでワンアウト2塁。ノーアウト1、2塁が作られて上位に回ると手が付けられない。ヌートバーと近藤も選球眼が素晴らしい。ノーアウト満塁、押出、更にノーアウト満塁で真打ち登場。大谷翔平のお出ましだ。
1番ヌートバーと2番の近藤に関しては近藤の方がバンティング能力は素晴らしい。今回栗山さんが集めた選手の中で、この2番近藤がビタっと嵌っている。最高の選手選択だった。最初は1番から5番まで左が並ぶので2番は右打者の方がと思ってみていたけれど、大会が始まるやイヤイヤその考えは間違い。例え左が続いても2番近藤が一番効果的に働いている。ここで近藤がしょうもないバントをやったり、ヌートバーの盗塁サポートをしてしまうと1点を取る野球になっちまうけど、近藤は自由に打たせて四球で1塁に行くかヒットを打ってつなぐか、またまた2塁打を打ってランナーを帰すかという3択なので1点を取る野球ではなくて、大量点を取る野球になっている。ここが素晴らしい。8番、9番が塁に出て1、2番につないだ時でも、1番から始まった打順でも近藤がチャンスを拡大する役割を担ってるので、このバッターのおかげで相手投手は
大谷に対する恐怖心が増幅されている。
ランナーが溜まって、大谷。村上。吉田のクリーンアップ大作戦。
これが1番怖いと思う。メジャー・リーグでは2番最強説というのがあるんですけどこれは統計的なデータに基づく考え方ですね。1年間の全試合を調べると2番バッターで試合が終わってることが1番多かったので、それじゃあここに信頼できる打者を置こうってんで1番とか2番にホームランバッターを置くようになりました。長打力のあるバッターには少しでも数多く打席に立たせたいという思いから1番とか2番にホームランバッターを並べます。去年ワールドシリーズに出場したフィラデルフィア・フィリーズの1番バッターはホームラン王に輝いたシュワーバーでしたし、ヤンキースのアーロン・ジャッジも1番を打つことが結構ありました。エンゼルスのトラウトに至ってはほぼ毎試合2番打者ですね。
メジャーでは1、2番にホームランバッターを置くのが当たり前になっているけど、日本では1、2番はつなぎで3番、4番にホームランバッターを置いている。どちらが良いかというと今回の日本の戦い方を見ているとやはり1、2番はつなぎに徹した方が相手は嫌かな?ランナーが溜まったときに大谷を迎えることが最大の不幸だし、ここで大谷、村上、吉田と強力な打線が続くと相手投手は疲労困憊。現実には村上は大ブレーキになってるけど大谷と吉田は走者を帰す役割を十分果たしているので日本の得点能力はここで大きく膨らんでいるように感じます。1、2番が塁に出て3番と5番で返す。いやいやいや、日本の場合は8番、9番が塁に出て1番、2番が更にチャンスを拡大して大谷翔平。この構図が何度もありました。
6番は本来吉田で決めきれなかった時の保険
だからかなり重要な位置付けであり、V9時代の黒江。松井・清原時代の元木の役割なのですが今回の6番打者はイマイチ。岡本か?山川か?どちらもファーストを守る選手が勤めそうな気配ですが、岡本の貧打と山川のどすこい空回りは見ていても辛いものがある。岡本は巨人の4番で5年連続本塁打30本以上って触れ込みだけど、日本の野球で30本塁打など価値に値しないと思う。村上の56本でさえメジャーに行ったらどうかと思うくらい懐疑的なのに、30本程度ではまず無理。岡本とか山川のバッティングを見てたら気の毒になるけど、この打順には普段はセカンドを守ってる牧にやらせたらどうかと思いますね。彼は村上、岡本、山川ほど大谷症候群に陥っていないと感じるので任せても良い気がします。それほどまでに大谷が日本に来て、試合前の打撃練習だとか、実際に試合で放った打球にレベルの差を感じてしまい
日本のホームランバッターが皆
大谷の前で良いとこ見せよう
大谷に負けたくない
そんな気持ちに陥ってる気がします。その点では牧、山田はのびのびやれてる感じがするので6番牧、7番山田の打順が機能するのではと思います。
最後に日本の砦は吉田正尚
去年の日本シリーズも2021年のオリンピックの時にもこのバッターの質の高さには驚いたけど、今回の日本の打線で最も頼りになる選手のひとり。私はこのバッターを見ると、かつての張本勲とか加藤秀治のような思いを抱くんですけどそれほどまでに打者としての完成度は高いです。追い込まれるまではフルスイングで本塁打も狙えるし強い打球を飛ばす。でも追い込まれるとコンタクトヒッターに徹して決して三振を喫しない。これは加藤秀治と同じ打法。身体は小さいけれど、パワーと左右に打ち分けるバットコントロールの良さは張本と酷似。恐らくボストン・レッドソックスもその辺のところを評価して5年で100億を超える契約を結んだと思うし、彼にはそれに値する価値がある。ボストンの本拠地ヘンウェイ・パークは左バッターが本塁打を量産するのは難しい球場だから、吉田がメジャーに行ってもホームランは年間10本程度に終わると思うけど、5番か6番を任せれば打率3割、100打点クラスの活躍ができるのではないかと思ってる。この選手が大谷とか村上の後ろにいれば日本のWBCは安泰。
ランナーが溜まったところで吉田がやってくれるでしょう。
過去2大会は日本では予選を勝ち抜いて本戦出場を果たしていますが、2大会ともアメリカ本土に渡って最初のゲームで落としています。その原因のひとつが長打力不足でした。第3回大会ではサンフランシスコのAT&Tパーク。第4回大会ではロサンゼルスのドジャースタジアムで行われましたが日本の選手はホームランによる得点は望めないと酷評されいずれもロースコアで負けていますね。ロサンゼルスではソロホームランが1本ありましたが結局2:1で負けてるのでロースコアに変わりはありません。日本の球場では、否東京ドームでは本塁打が打てるけどメジャーの球場では本塁打が打てないから負けたのだという意見も強ち間違いではなかったので、長打力の不足解消は重要なテーマです。
野球で1番簡単に点が取れるのはホームランなのですから。
サッカーは決められた試合時間の中で点取りゲームだけど、野球は27個のアウトを取られるまでの点取りゲーム。点数を1点、1点積み重ねるよりも走者を溜めて外野手のいないところに打球を飛ばす方が理に叶ってるし、勝敗に大きく左右されます。ランナーを溜めるにはフォアボール。一気に返すにはホームラン。この二つを持てるチームが最終的には優勝することにつながりますので、今回の侍ジャパンの1番から9番までの打線は凄く期待が持てるのです。
そこで今回の本戦球場の画像を掲載しておきますが
場所はフロリダ。マイアミ・マーリンズの本拠地ローンデポ・パークです。
オレステス・デストラーデがマーリンズにいたときはプロプレイヤー・スタジアムでセンターの奥が深いからバミューダ・トライアングルに本塁打を阻まれてきたってことはこれまでに書いてきた通りですが、今回は球場が変わりその時よりも本塁打が出やすい構造になっています。ところがアメフトと野球の両方を使う試合場というのは変わりなく、やっぱりセンターの奥深いところには
バミューダ・トライアングルが待ち構えています。
流石に大谷翔平でもこのバミューダ・トライアングルに本塁打を打ち込むのは困難ですが、彼ならば3塁打じゃなくって、ここに打球が飛んだ時にはランニング・ホームランになるでしょう。
※イタリアは侮れない相手ですが、勝利できると思って本日この記事を公開します。万が一の事が起こればこの記事は没ネタにします。そうならないことを祈っておりますし、最終的には22日にも笑顔で終われるように。今回だけはオールジャパンが世界イチになれるんものだと思って書きました。
コメント
球場の広さが違う事を初めて知りました。
球技でいわゆるコートの広さが違う競技があるんですね。
サッカーもテニスもバレーも全部一緒なのに野球場は広さが変わる事にビックリです。
ユリア様
メジャーリーグの球場は
全て球場の広さも違うし
球場の形も左右で非対称です。
負けを覚悟したメキシコ戦でしたが吉田の3ランと、村上のセンターオーバーはしびれました。最後村上の打球がセンターに飛んでよかったです。
レフトに飛んでたら取られてますから。
あのレフト嫌やわあ。