メンタルヘルスの問題から二次的にパチンコ依存の例も リカバリーサポート・ネットワークが1年間の活動を報告
全日遊連は19日、第一ホテル東京において、ぱちんこ依存問題相談機関「リカバリーサポート・ネットワーク」(略称:RSN)の1年間の活動状況報告・記者懇談会を開催した。同機関は全日遊連の全面支援により設立された非営利の相談機関で、昨年4月から電話による相談業務を開始している。
相談業務開始からの1年間に同機関に寄せられた電話相談の数は989件で、そのうち対象者(依存の問題を抱える人)の家族・友人からの相談が47%、問題を抱える本人からの相談が43%。最も多い相談内容は「やめる(やめさせる)方法」。また、半数以上が「借金がある」と回答した。
相談(通話)時間の平均は約16分、最も多いのは10分縲・0分未満。遊技の途中に入ったトイレでRSNのポスターを見て電話をかけたものの、また打ち始めるためにすぐ切ってしまうケースなどもあるという。
RSNの組織統括責任者・西村直之医学博士の説明によると、20分縲・0分ほどあれば、対象者が抱える問題点の整理や、その地域にある精神保健福祉センター・自助活動団体などの情報提供が可能だという。
また、相談者がドメスティック・バイオレンス(DV)の被害者で、家に居場所がなく、寂しさを紛らわすためにホールに入りびたりになってしまっている例や、子供を虐待してしまわないよう、子供を家に置いてホールに行ってしまう例、精神的な疾患などで通院中の人や知的障害を持つ人が、社会の中でやることがなくてついパチンコに行ってしまう例など、他の問題も抱えているケースが少数ながらあったという。
この件について西村氏は「精神障害などで既に医療的なケアを受けている方には、治療方針との兼ね合いから、こちらでは積極的な介入・指示はせずに主治医に返すようにしているが、依存の問題に関しては医療機関の理解度の低さから十分にカバーできていないようだ。福祉的な受け皿の不足、メンタルヘルスの問題などから二次的にパチンコ依存を引き起こしているケースが少なからず存在している」と語った。
一方で、日本ではギャンブル依存についての調査結果や十分な知識を持った専門家が少ないなどの問題がある。この点について西村氏は「地域の精神保健福祉センターなどへの相談が増えることで、行政側にも、適切に対応できる人員の研修・育成、予算化などの動きが起きてくるだろう。また、この(RSNの)活動が引き金かどうかはわからないが、地域の精神保健福祉センターで(依存問題を抱える人の)家族の会やGAなどの活動が増えてきた」と説明した。
遊技機の射幸性と“のめり込み”との関係について西村氏は、「例えばアルコール依存では、度数の高い酒に皆が依存するわけではないが、度数が高いほうが依存症にはなりやすい。しかし度数の低い酒で命を落とす人もいる。射幸性だけが問題ではないが、射幸性が高いとそれだけハイリスクになるだろう」と説明し、射幸性の抑制が依存問題のリスクを軽減すると推察。また、山田理事長は「射幸性が低くなれば、経済的破綻などの問題は減るだろうと見ている」と語った。
また、ぱちんこ依存問題研究会の米田座長は、ホールスタッフの中にも依存問題・借金を抱えている人がいることに懸念を示し、「これを放置していると、ゴト集団に勧誘されるなど不正行為に繋がる恐れがある。不正防止のため、会社を守るためにも(依存問題への取り組みは)重要と考える」と語った。