「伝説のカーニバル物語」とは? -同一機種名炸裂の秘密に迫る-
『カーニバル』は10機種以上発表されている!
ここはとある喫茶店。老若男女7人が集まり『カーニバル』という機種に関して話をしている。
A氏「出玉が魅力の3回権利物、『カーニバル』はよく打ちましたよ。オールマイティ図柄も良かった。リーチが長くなっただけで興奮できたし」。
B氏&C氏&D氏&E氏&F氏&G氏「……」。
B氏「『カーニバル』は2回権利物ですよ。2回目の権利獲得はボタンを押して保留を解除するんです。あの自力感が良かったなあ」。
A氏&C氏&D氏&E氏&F氏&G氏「……」。
C氏「いや、『カーニバル』は230分の1のデジパチですよ。確か三星から発表されたんじゃなかったかな」。
A氏&B氏&D氏&E氏&F氏&G氏「……」。
D氏「違いますよ。『カーニバル』といえば銀座の一発台じゃないですか! 天下の丸い穴が特徴的な」。
A氏&B氏&C氏&E氏&F氏&G氏「……」。
E氏「あれあれ? 皆さん、誤解していますよ。『カーニバル』っていうのは、『スパイダー』や『ロデオ』が出た頃に発表されたマルホン工業の羽根物じゃないですか」。
A氏&B氏&C氏&D氏&F氏&G氏「3機種とも知らないな」。
E氏「……」。
F氏「自分にとっての『カーニバル』は三洋物産ですよ。天にクルーンがあってど真ん中にアタッカーがある……」。
D氏「それは『2号』ですね」。
G氏「私の知っている『カーニバル』は西陣の普通機なんですが……」。
A氏&B氏&C氏&D氏&E氏&F氏「そんな古い話は知らん!」。
侃々諤々、話は終わりそうもないので、架空のお話はここで幕とする。ちなみに、すべての人の話が真実であり、誰も間違っていない……。
太陽電子から発表されたアレンジ・『カーニバル』のAとB。北海道に設置されたバージョンだ。
クルーンとアタッカーとチューリップがいい味を出している『カーニバル2号』と、天下の丸い穴が自己主張している銀座の『カーニバル』。
どちらもかなりのマイナー機で、『カーニバル』といってこの機種が思い浮かぶ人がいたとしたら……変態だ!
1年に3機種の『カーニバル』が発表された!
カーニバルというのは謝肉祭、催事のことで、パチンコ台の機種名として使いやすいのだろう(セルデザインもイメージが湧きやすい気がする)。
1979年のSANKYOの『カーニバル』発表後、80年に西陣から普通機の『カーニバル』(W15)、1984年頃に太陽電子からアレンジの『カーニバル』、1988年に三洋物産から『カーニバル2号』、1989年に銀座から一発台の『カーニバル』、1990年にマルホン工業から羽根物の『カーニバル』が出ている。1992年にはニューギンから3回権利物の『カーニバル』、奥村遊機から2回権利物の『カーニバル』、三星からデジパチの『カーニバル』と、何と同一機種名で同じ年に3機種発表されるという珍事が起きている。
この3機種同時があまりにも衝撃的だったからか、その後『カーニバル』は発表されていない。機種名のどこかに『カーニバル』が付く機種なら2006年の『CRバードカーニバル』と2014年の『CRギンギラパラダイス情熱カーニバル』(ともに三洋物産)、そして2017年にリメイク版として蘇ったニューギンの『わくわくカーニバル』がある。
やっぱり『カーニバル』といえばニューギンの権利物だろう。長くなればアツいという単純なリーチ演出は、2017年に登場した『わくわくカーニバル』に受け継がれている。
1年おきに繰り返される同一機種名同時発表の怪
1992年に起こった「同一年に、同一機種名で、違うメーカーから3機種発表」というのは恐らく後にも先にもこの『カーニバル』だけだろう。なぜ、この年にいきなり「カーニバル」ブームが到来したのかは謎である。しかし「同一年に、同一機種名で、違うメーカーから2機種発表」なら他にもある。それを発表しよう……の前に、一応、『カーニバル』に「優劣」というか、どの『カーニバル』がより速い『カーニバル』だったのかを検定番号(パチンコ台の審査の際に与えられる番号)で決着を付けよう。1→奥村遊機(220277)、2→ニューギン(220298)、3→三星(200397)。ま、そーゆーわけだ。
さて、では次に、「同一年に、同一機種名で、違うメーカーから2機種発表」を見ていこう。あまりに古い機種に関しては、多分、今ここで書いても知っている人が死んじゃっている比率が高そうだから割愛して、1990年以降に限って紹介する。すると、とても面白いことがわかった。な・ん・と! 「同一年に、同一機種名で、違うメーカーから2機種発表」というケースは1990年から2年ごとに生じているという事実が発覚したのだ! 発見者に敬礼!
まずは1990年。8月にSANKYOから『汽車ぽっぽII』という羽根物が発表された。と、その1ヶ月後、平和から『汽車ポッポDX』が同じく羽根物で登場したのだ。文字にすればひらかなとカタカナという違いはあるけれど、話す際はSANKYOの~とか、平和の~と言わなければならない。SLを題材にした機種は比較的多く、普通機として1975年に西陣から『デコイチ』、82年に大一商会から『D51No.2』、83年に西陣から『D-51-13』(これのみ羽根物)、88年に三洋物産から『D-51』がそれぞれ出ている。D-51というのは日本で最も多く製作されたSLで代名詞のように使われているから、機種名にも多用されたのだろう。ちなみに、21世紀には2007年にサンセイR&Dから『CR SL物語』が出ている。
パッと見で汽車らしいのは平和のほうか? が、打てばSANKYOの汽車も楽しいことがわかる。まだ賞球がオール13の頃だった。
売れたほうの印象しか残っていないかも
次は1992年のこと。5月に大一商会から連チャンする権利物『ダイナマイト』が発表された。と、8月には三洋物産からも『ダイナマイト』という権利物が出る。前者は一世を風靡するほどの人気機種となり、その後もシリーズ機が出るほどの機種に育ったが、後者は知っている人さえ少ないことだろう。これは文句なく、大一商会の勝ちだ。
そしてまた2年後。もう出ないと言われていた連チャンする3回権利物として、ニューギンが『キューティーバニー』を発表する。3回権利物が連チャンするのだからこれはたまらん! というわけで、当然大人気機種になった。その陰でひっそり登場したのが、マルホン工業のデジパチ『キューティーバニー』だ。これは前年に発表されたマルホン工業発のカラー液晶デジパチ『キューティーガール』の姉妹機で、200分の1のノーマル機。検定番号を見ると、ニューギンの『キューティーバニー』は320292、マルホン工業の『キューティーバニー』は300371だから、ニューギンのほうが早かったと言えよう。
そしてまた2年の歳月が流れると、豊丸産業から『CR竜王伝説Z』というデジパチが発表される。その後、いくつものシリーズ機が出るほどの人気機種に育つのだが、1か月後に平和から『CR・RYU-OH』が出た。声に出したらどちらも「りゅうおう」だ! 紛らわしいので、前者はちゃんと『竜王伝説』といい、後者は平和の『りゅうおう』と呼んで区別した。確率はどちらも390分の1前後だった。後継のシリーズ機がいくつも出ているから豊丸産業の『竜王伝説』の勝ち(何に勝ったのか?)。
次は1998年だ。またしても豊丸産業と平和の戦いとなる(だから何を戦ってるって?)。豊丸産業が『CRモーレツ原始人』(現金機はブリバリ原始人)を出したと思ったら3ヶ月後に平和も『CR・よくばり原始人』(現金機もある)を出したのだ。モーレツだかよくばりだか知らないが、なぜに原始人? どこかの国で原始人が発見されたのだろうか。ちなみに、1998年にいきなりフューチャーされた「原始人」だが、その後に「原始人」が付く機種は発表されていない。『原人王』とか『ジャングルパーク』などはあるけれど。まさに不思議な一瞬だけの限定的な原始人ブームだったのである。
言わずと知れた爆裂連チャン権利物が大一商会の『ダイナマイト』。後継機も出ている。三洋物産の『ダイナマイト』は役物が面白い。
セルデザインはどちらもしっかりキューティーなバニーが描かれている。カラー液晶で3回権利物で連チャン機で。そりゃあ、ヒットするでしょう、ニューギンの『キューティーバニー』。ちなみに、2017年春に発表されたのは『CRキューティーハニー』だ。
モチーフは片や「竜」、片や「将棋」と大きく異なる。『CR竜王伝説』はその後も多くの後継機が発表された。どちらもデジパチだ。
「原始人」というわりには、どちらのセル盤にもマンモスが描かれているのはなぜ? 両方ともに現金機もある。
「物語」と「伝説」は人気がある機種名なのだ
さて、最後に。平和と豊丸産業が2回連続で出てきたから思い出したのだが、機種名のケツに『~物語』とか『~伝説』が付く機種って意外に多くないか? まあ、物語に関しては『海物語』があるから、その兄弟機を集合させると、恐らく世界でいちばん売れたパチンコ台が『~物語』である、ということになるけれど、それはひとまず置いておいて。
まず『~物語』。この元祖は平和が1991年に発表した『麻雀物語』である。94年まで立て続けに『ダービー物語』、『綱取物語』、『プリンセス物語』、『弾丸物語』、『雀姫物語』、『トランプ物語』と出している。恐らくカラー液晶機では『~物語』の機種が作りやすいことと、元祖の『麻雀物語』が大ヒットしたことで連発したと思われる。20世紀内ではニューギンの羽根物(『湘南物語』)と三洋物産の『海物語』くらいしか出なかったが、21世紀になると、豊丸産業、三星、タイヨーエレック、マルホン工業、ビスティ、エース電研、サミー、A-gonなどからも『~物語』が発表されている。
次に『~伝説』。この元祖は西陣が1992年に発表した宇宙伝説(型式名はルーキーVZP-2)である。まさにこの機種から伝説が始まったのである。印象としては豊丸産業の機種に『~伝説』が多いような気もするが、豊丸産業一発目の伝説となる『勝負伝説』(1994年)や『カジノ伝説』(1995年)などの一般電役がヒットしたからかもしれない。そしてこの『~伝説』だが、発表機種数が少なかった1999年と2000年を除くと、2015年まで、どこかのメーカーが年に1機種は発表していた。そうなのだ! その記録が16年に途切れたのだ。残念!(んなことないか)。ちなみに、『~伝説』に関してはほとんどのメーカーから出ているのも特徴で、西陣と豊丸産業以外の平和、竹屋、京楽産業.、三星、マルホン工業、大一商会、ニューギン、タイヨーエレック、藤商事、奥村遊機、アビリット、銀座、SANKYO、エース電研からも出ている。う~ん、『~伝説』って人気者~!
物語は平和の『麻雀物語』から始まった。他に物語が付く機種としては、『平家物語』(豊丸産業)、『うらめしや怪談物語』(マルホン工業)、『果物物語』(タイヨーエレック)、むし虫物語(aaa)など多数ある。 『宇宙伝説』から始まった伝説が付く機種は、他にも『国盗伝説』(三星)、『海へいこう人魚伝説』(マルホン工業)、『ガッツ石松の最驚伝説』(ニューギン)、『かっぱ伝説』(藤商事)など多数ある。