「ぱちんこ依存問題を考える」フォーラムを開催(RSN)
ぱちんこ依存問題の相談機関「リカバリーサポート・ネットワーク」(略称:RSN)は19日、東京都大田区「大田区産業プラザ」において「第1回ぱちんこ依存問題を考える」フォーラムを開催。RSNの事業紹介や、強迫的ギャンブラーの回復施設であるNPO法人 ワンデー・ポートの活動紹介・体験談発表、ぱちんこ依存問題についてのシンポジウムなどが行なわれた。
シンポジウムでは、RSN相談統括責任者兼運営委員の安高真弓氏(臨床心理技術者、精神保健福祉士)が司会を務め、伊波真理雄氏(精神科医)、稲村厚氏(司法書士、ワンデー・ポート理事長)、中村努氏(ワンデー・ポート施設長兼理事)、力武一郎氏(全日遊連 ぱちんこ依存問題研究会委員)がパネラーとして参加した。
始めに力武氏が、ホールの経営に楽しさを感じる一方で、遊技機の射幸性が高まるにつれ自殺や幼児の車内置き去りなどが問題化しはじめたことに葛藤を感じ、対策法を求めてワンデー・ポートにコンタクトをとったという経緯を説明し、他のホール経営者に声をかけてぱちんこ依存のセミナーを開催したり、ホール内でのRSNのポスター掲示や従業員への指導などの活動を行なっていることを紹介した。
続いて稲村氏が司法書士の立場から、多重債務に陥った病的ギャンブラーへの対応などを説明。まず第一にやるべきことは「債務の根本的問題を見抜くこと」と指摘し、ぱちんこ依存の問題に気付かずに債務だけを整理してもまた借金をしてしまうことが多いため、依存から立ち直った後に債務整理を行なうのが望ましいと語った。
伊波氏は、アルコール依存の回復率が日本では1割なのに対しアメリカでは6割であることや、サポート体制の日米の違いなどを紹介し、「日本では(依存症の人に)罪悪感を持たせる対応をとっている。自分が“悪い人間”であると思っている人が健康的に生きようとするのは難しい。自分をコントロールできない病気にたまたまかかったのだ、自分は“いい人間”として生きる権利がある、というのがアメリカ的な考え方。これが1割と6割の差だろう」と説明。“依存症の人を社会の厳しい目から守る”という目的で回復施設に入所させるという考え方を披露したほか、病的ギャンブラーの家族に対する教育プログラムを実施していることを紹介した。
中村氏は、ワンデー・ポートでの活動を通じて、ぱちんこ依存が“病気”であるという考え方から“ギャンブルに問題がある”という考え方に変わってきたことを語り、「依存症を“病気”や“障害”というくくりで考えないほうがいいと感じているが、一方で、本当に障害があるため、生き辛さや不安などからギャンブルにはまっている人もいる。アメリカでは分けて対応するのが主流だが、日本では一緒に捉えられている」と説明した。
その後行なわれたディスカッションでは、依存症と軽度発達障害などの精神疾患との違いの説明(伊波氏)や、パチンコ業界内で増えつつある低価格玉貸営業の紹介(力武氏)などがあった。また、力武氏はホール業者の立場から「来店客のうち15%くらいが潜在的に依存問題を抱え、そのうち5%くらいのお客様がかなりの問題に直面しているのではないかと感じている」と語った。