ギャンブリング問題の援助職者・サポーター養成講座を開催(RSN)
パチンコ・パチスロに関する依存問題の相談機関・リカバリーサポート・ネットワーク(RSN)は8月27日、神奈川県横浜市の神奈川県司法書士会館において、「援助職者・サポーター養成講座 事例から学ぶギャンブリング問題への理解と対応」を開催した。
この講座は、ギャンブリング問題を抱える本人またはその家族から相談を受ける機会がある人を対象としたもの。医療関係者、ソーシャルワーカー、NPO法人や各種相談機関の関係者、司法書士など約30名が参加した。
講座では、RSNの西村直之代表が精神科医の立場からギャンブリング問題について、稲村厚氏が司法書士の立場からギャンブリングの問題により生じた多重債務への対応について講義したほか、同問題からの回復者本人・家族の体験談の紹介、ケーススタディなどが行なわれた。
ギャンブリング問題の基礎知識の講義で西村氏は、この問題の対応が日本で遅れている理由として、ギャンブリングの定義ができていないこと、ギャンブル依存症という医学用語もなく医療の分類でも位置付けがまだ確定していないこと、国際的にも国により定義が若干違うことなどを説明。その上で、諸外国の定義に共通するギャンブリングの種類・定義や問題レベルの診断項目などを紹介した。
また、ケーススタディでは、ギャンブリングと関連しやすい問題として「金銭トラブル・経済的困窮」「家族関係」「暴力」「情緒・感情」「他の精神障がい・依存」「身体的疾患」「触法行為」「就労・就学」の8点を紹介。以前からもともと抱えていた衝動制御の問題が進行・シフトしてギャンブリングの問題として表面化している可能性があるとし、ギャンブリングを開始する前の状態にも着目すると問題点を捉えやすいことを説明した。
稲村氏は、ギャンブリング問題で多重債務を抱えた人の債権整理を多数行なってきた経験をもとに、多重債務への対応・介入の方向性について講義を行なった。その中で稲村氏は「(問題を抱える本人は)“借金の問題”としては反省しているが、ギャンブルをすることを問題とは思っていない。家族が肩代わりして返済し借金が無くなると、「ちょっとだけ」と思ってまたやり始め、また債務を作ってしまう」と語り、家族が債務を肩代わりするのは“結果への対処”であって“問題の解決”にはなっていないことを指摘。安易に債務整理をせず、まずは問題を認識することが必要と説明した。
また、グレーゾーン金利や貸金業者に対する規制など、借金返済に関する知識を深めることで、返済に関する不安感を軽減できることも紹介した。
また、ギャンブリング問題の回復施設「ワンデー・ポート」の中村努氏(施設長、NPO法人ワンデーポート理事)が、問題を持つ当事者の回復とそれに必要な支援、ワンデー・ポートでの対応事例や回復プログラムなどを紹介。そして「“ギャンブル依存症は病気だ”とか“自助グループに行けばいい”という画一的な捉え方ではとても対処できないのではないか、ということが(ワンデー・ポートを設立してからの)この8年間で見えてきた」と語った。
最後に西村氏が、同問題の援助のあり方について講義。介入する問題の整理と介入モデル(医療、法、福祉など)の選択、介入の志向性の選択について説明した。
その後質疑応答が行なわれ、女性ギャンブラーについての情報や対応、債務整理の相談への対応などについて多くの質問が挙がった。